劇伴倶楽部 > 腹巻猫ブログ > ナイトメア・アリー

ナイトメア・アリー

ナイトメア・アリー

ギレルモ・デル・トロ監督の新作『ナイトメア・アリー』を観ました。

内容をよく知らなかったので、てっきり、ダークなファンタジー映画だと思っていたのです。
それというのも、昔『夢喰いメリー』というアニメがあって、その主人公の名がメリー・ナイトメア。夢魔と戦うヒロインの話です。だから、この映画も「ナイトメア・アリー」というキャラクターが登場する話かと…。
映画を観ながら、「誰がアリーなんだろう…」と思っていましたよ。

実際はファンタジーではなく、フィルム・ノワールというか、犯罪映画です。
しかし、現実と幻想があいまみえる、デル・トロらしい映画でした。

原題は「Nightmare Alley」。「Alley」は小路、路地のことで、「ナイトメア・アリー」は「悪夢の路地」みたいな意味になります。
1947年に同じ原作を映画化した『悪魔の往く町』という映画が公開されているそうですが、そちらは未見。

序盤はカーニバルの見世物小屋が舞台。ちょっとレイ・ブラッドベリ的香りがあり、デル・トロらしい。
映画のメインは、カーニバルにいた主人公が都会に出てきてから。第二次大戦直前の不安な世情を背景にしたクライムサスペンスの趣。ブライアン・デ・パルマあたりが好きそうな感じです。

主人公は人の心を読む読心術師。読心術といってもトリックです。野心を持った男が読心術を使って人の心をあやつり、のしあがろうとする。 読心術という幻想を現実にしようとし始めるわけです。
が、結局、自分が生み出した幻想に手痛いしっぺ返しをくらい、破滅していく。
かいつまむとそんな話。

「ナイトメア・アリー」=「悪夢の路地」とは、主人公の人生の比喩だと思いますが、この映画全体が、悪夢の中をさまよっているような妖しい雰囲気に満たされています。
映像が暗い。空はどんより曇っているか、雪や雨が降っている。 室内は光が射していても半分は影になっている。主人公はいつもその影の側にいるか、顔に深く影が落ちている。
これも主人公が闇に囚われていること、そして、この世界が悪夢であることの象徴的表現でしょう。

登場人物の中では、なんといってもケイト・ブランシェットが演じる謎めいた精神科医が印象的でした。彼女は、いってみれば、主人公を誘う夢魔であり、メフィストフェレスの役割ですね。

音楽はもともと『シェイプ・オブ・ウォーター』のアレクサンドル・デスプラの参加が予定されていたそうですが、スケジュールの都合でネイサン・ジョンソンに交代。弦楽器中心のオールドスタイルの音楽で効果を上げています。

ジャケット画像