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舞台「千と千尋の神隠し」

舞台「千と千尋の神隠し」

3月29日、帝国劇場で公演された舞台「千と千尋の神隠し」の夜の部を観劇しました。

観るのは初めて。NHKでこの舞台が初演されたときのドキュメンタリーが放送されて、なんかすごいことやっているので、ぜひ観たいと思っていたんですよ。

すごかったです。

大がかりで凝った舞台装置と、照明、プロジェクション・マッピングなどを使って異世界を構築。 特に第1幕は舞台上で常にセットが動き、組み変わっている。その中で芝居も続けられている。ちょっとタイミングが狂うと事故が起こりかねない。そのめくるめく感覚が理屈では理解しがたい異世界の雰囲気を作り上げている。よくぞ作ったと感嘆しました。

油屋を訪れる神々も見どころです。神様といっても妖怪みたいなもので、特異なデザインを、衣装や着ぐるみ、ライオンキング方式、マペット、操演などで動かし、芝居をさせる。いろんな技術が総合されてるなぁ。舞台を作り上げた中心はイギリスのスタッフなんですが、イギリスの舞台劇の伝統と、歌舞伎、能、特撮などの日本の伝統芸が組み合わさって完成した舞台ではないかと思いますね。

この回のキャストは、千尋が朝ドラ『カムカムエヴリバディ』現代編のヒロイン・川栄李奈、ハクが『天気の子』の主人公・森嶋帆高の声・醍醐虎汰朗、湯婆婆が『鋼の錬金術師』のエドワードをはじめ数々のアニメキャラの声でおなじみで『侍戦隊シンケンジャー』では顔出しもされていた朴ロ美(ロは正しくは王偏に路)(プリキュアファン的には『Yes! プリキュア5GoGo!』のシロップの声)と、私的にいろいろおいしい顔ぶれでした。
川栄李奈さんは3月27日が初日。まだ役がなじんでない印象がありますが、精一杯の演技に返って千尋の必死さが感じられてよかった。朴ロ美さんの湯婆婆(銭婆と二役)はさすがです。セリフの迫力、振り幅の広い演技がすばらしい。

舞台は2幕構成。不可思議な異世界をたっぷり見せる1幕に対し、2幕はいわば謎解き&解決編。映画はいろいろ謎を残して終わってしまうけれど、舞台はきれいにまとめて、しっかりテーマに決着をつける。映画とちょっと印象が変わりますね。
『ナルニア国物語』『トムは真夜中の庭で』『思い出のマーニー』などの名作児童文学の伝統があるイギリス人らしい翻案と言えるかもしれません。

音楽について。
オリジナルスコアは久石譲、音楽スーパーヴァイザーとオーケストレーションはイギリスのスタッフ。舞台の音楽監督は『ひろがるスカイ!プリキュア』『わんだふるぷりきゅあ!』の音楽を担当している深澤恵梨香。アニメ版音楽のアレンジもありますが、オリジナル曲もあったような?
舞台ではオーケストラピットもつぶしてステージにしています。オーケストラの姿が見えず、録音なのかなと思っていたら、カーテンコールのときに疑問が解けました。舞台の奥が2階建てになっていて、その上にオーケストラがいて生演奏しているのでした。びっくりしたなぁ。たぶん指揮者がモニターで舞台を見て、ヘッドフォンでマイクが拾ったセリフを聞きながら演奏している? 音楽とタイミングを合わせて芝居するシーンもあるので、これもなかなかの超絶技巧です。
アニメ版がベースになっているとはいえ、舞台版は独自の音楽なので、スタジオ録音で音楽集発売してくれないかなぁ。

カーテンコールでは客席総立ちのスタンディングオベーションとなりました。挨拶をする川栄李奈さんがなかなか立派な座長ぶり。感動しました。

帝国劇場の「千と千尋の神隠し」は3月30日が千秋楽。
このあと、愛知(名古屋)、福岡(博多)、大阪(梅田)、北海道(札幌)、イギリス(ロンドン)で公演するそうです。
すごい舞台なので、機会ががあれば、ぜひご覧ください!
https://www.tohostage.com/spirited_away/index.html

「千と千尋の神隠し」プログラム

舞台「千と千尋の神隠し」を観たいと思った理由はもうひとつあって、会場の帝国劇場が建て替えのため、2025年2月にいったん閉館してしまうのです。

つまり、現在の帝国劇場が観られるのは今のうち。

帝国劇場ではミュージカル「レ・ミゼラブル」「ローマの休日」などを観劇したことがあり、思い出深い劇場です。

1911年開場の趣のある建物。
中に入ると美しいステンドグラス、現代美術家が手がけた彫刻や絵画、オブジェ。

2階につながる階段は手すりが左右に広がるように傾いた独特のデザイン。手すりの中に照明が仕込まれていて足元を照らすようになっています。その照明に浮かび上がる木目の模様はプリントではなく、本物の木の板を薄くスライスしてはめこんでいるんですって。おそろしく手間とお金をかけた意匠です。

閉館までにもう来れないかもしれないので、早目に行って館内をめぐり、写真撮ってきました。

これから行かれる方は、ぜひ劇場の内装にも注目してみてください。

帝国劇場01

帝国劇場02

帝国劇場03

帝国劇場04

帝国劇場05

帝国劇場06

帝国劇場07

帝国劇場08