藤子不二雄Aのまんが道展
トキワ荘マンガミュージアムで開催中の「藤子不二雄Aのまんが道展」に行ってきました。
https://tokiwasomm.jp/exhibition/2022/10/post-37.php
『まんが道』の原画や貴重な写真を見ることができます。
小学生の頃、『まんが道』の最初の単行本(あすなろ編)と石森章太郎の『マンガ家入門』が愛読書だったので、本作には思い入れがあるのですよ。
夢にあふれていた若者たちの青春に触れた気がしました。
先日観たスピルバーグの『フェイブルマンズ』とも不思議なシンクロニシティ。
後半は複製原画や印刷物による藤子不二雄A作品関係の展示。
トキワ荘時代の藤子不二雄A作品ヒストリーや作風の紹介、トキワ荘に集った漫画家たちの紹介など。
なんと今回は展示がすべて撮影可!
庭では桜が咲いていました。
「まんが道展」は3月26日までなので、気になる方はお早目に。
次の展示は4月6日から「W50周年記念 デビルマン×マジンガーZ展」だそうです。
https://tokiwasomm.jp/exhibition/2023/02/post-40.php
映画「フェイブルマンズ」
スピルバーグの新作『フェイブルマンズ』を観ました。
2時間半をまったくだれずに見せる演出力はさすがスピルバーグ。
スピルバーグの少年時代をモデルにした自伝的作品。
映画作りに熱中する少年サミー・フェイブルマンの成長物語であり、「フェイブルマンズ=フェイブルマン家」というタイトル通り、家族の物語でもある。
サミーと家族にさまざまな問題が降りかかるけれど、スカッと解決はしない。苦い後味が残る。それがいかにも「人生」という感じ。なんとなく盛り上がってないのはそのせいかな。「面白いから見て」「泣けるから見て」とは言い切れないところがある。
映画は、ふつうのハリウッド映画だったら「さあ、これから巻き返し」というところで終わる。多くの人は「その先が見たいんだよ」と思うはず。でも、その終わり方がとてもいいと思った。
これはスピルバーグの『まんが道 あすなろ編』なんだろう。挫折やつらいこともたくさんあったけれど、夢にあふれていた少年時代を思い出す。観終わって「前に進もう」という気持ちになる。
たぶん『まんが道』のような続編はないと思うけれど、これでいい。
吉松隆オーケストラ傑作選
3月11日、東京芸術劇場で「吉松隆の〈英雄〉 吉松隆オーケストラ傑作選」を聴いてきました。
私にとって吉松隆さんはアニメ『Astroboy 鉄腕アトム』と大河ドラマ『平清盛』の人ではあるのですが……。
一度、純音楽作品をちゃんと聴きたいと思っていたので、今回は恰好の公演でした。
原田慶太楼指揮、東京交響楽団の演奏。
演目は、
「鳥は静かに… op.72」
「鳥のシンフォニア “若き鳥たちに” op.107」
「タルカス」
「交響曲第3番 op.75」
いやー、よかった。
シベリウス的な「鳥は静かに…」、ポップなリズムも登場する「鳥のシンフォニア」、ELPの名曲をオーケストラ曲にした「タルカス」、重厚で、ときに激しく躍動感に富んだ交響曲第3番。
現代音楽だけど暗鬱なところがなく聴きやすい。それに面白い。
『アトム』や『平清盛』のルーツを確認できた思いです。
若い世代の聴衆が多く見えたのも印象的。物販でスコアを買い求める人もいて、音楽をやっている人なのでしょう。
ミーハーなのでサイン会に並んだら、列が1階から3階まで伸びていて、サインもらうまで30分くらいかかってしまった。
で、吉松さんに「『鉄腕アトム』の音楽大好きです」と言ったら苦笑されてしまった。いや、照れていたのかな。そう思おう。
☆ロビーに展示されていた吉松さんのスコア、ノート類(接写でなければ撮影可と確認して撮影してます)
スターダンサーズ・バレエ団公演「MISSING LINK」
3月3日夜、東京芸術劇場プレイハウスで開催されたスターダンサーズ・バレエ団公演「MISSING LINK」に足を運びました。
蓜島邦明さんが音楽を手がけるモダンバレエ(コンテンポラリーダンス)です。
2階の席に着くと開演前から不思議な音楽が流れている。
見下ろすと、オーケストラピットで蓜島さんがキーボード2台とシンセサイザーを並べて音楽を演奏しています。
ステージには「まずは音楽をお楽しみください」と書かれたプラカードを持った出演者の姿が。
客入れから生演奏というぜいたくな趣向でした。
公演は第1部が蓜島さんの新作音楽によるダンス。
蓜島さんとヴァイオリン(高木和弘)による生演奏をまじえた音楽でした。
蓜島さん得意の怖い音楽かと思っていたら、前衛的でおしゃれ。フランス現代音楽のようなサウンドで驚きました。まさに現代のバレエ音楽と言う感じです。
2部の「Degi Meta go-go」は2002年にヨーロッパで公演して大成功を収めた作品の再演。
蓜島さんの音楽は、機械的なビートをバックに展開するノイズ系音楽。インダストリアルミュージック的な趣もある。
ダンサーの踊りが加わるとなかなかシュールで、リアル『世にも奇妙な物語』を観るようでした。
期待どおり、いや期待を上回るすごい音楽でした。
強烈な音楽体験で、頭くらくらしながら帰りました。
舞台作品の音楽は商品化されないことが多いし、直に体験してこそという面もあります。生で聴けてよかったです。
『マルコ・ポーロの冒険』発掘上映&ゲストトーク
2月25日、川口市SKIPシティ内NHKアーカイブスで開催された「『マルコ・ポーロの冒険』発掘上映&ゲストトーク」に行ってきました。
1979年~80年にかけてNHKで全43話が放送されたアニメ『マルコ・ポーロの冒険』の上映とゲストによるトークのイベントです。
『マルコ・ポーロの冒険』はマッドハウス制作のアニメーションと実写の紀行映像を組み合わせた「アニメーション紀行」と冠のついた作品でした。
当時、毎週楽しみに観ていたんですよ。レコードも買いました。
徳間書店からロマンアルバムが発売されてるくらいで、アニメファンの間でもけっこう人気があったのです。
しかし、その後、再放送やソフト化の機会に恵まれず、聞くところによればNHKに保存されているのは第1話と最終話のみ。当時リアルタイムに観ていた人しか覚えてないという残念な状況でした。
それが、近年になって家庭用ビデオに保存されていた映像が徐々に集まり、2020年には音声の入ってない全話の映像がフィルムで発掘されたというニュースが。
https://www.nhk.or.jp/archives/hakkutsu/news/detail282.html
で、今回の上映&ゲストトークです。
いよいよ「集まった映像が観られる日が来たか!」と胸が躍りました。
定員70名のところ、無事抽選に当選して参加してきました。
上映されたエピソードは第4話、第12話、第42話。観るのは放送当時以来。
映像は家庭用ビデオデッキで録画されたものでした。ゴーストが入ったりテロップがにじんだりしてますが、絵も音も案外きれい。十分観られます。
画作りが大胆で劇画的。今のアニメでは観られないスタイルです。当時から「出崎アニメっぽいな~」と思って観てました。キャラクターデザインが杉野昭夫さんだし、入射光がばりばり入ってるし。
今観ると、りんたろう、真崎守っぽいなあと思うところもあり。要はマッドハウスっぽいです。後年の『カムイの剣』とルックスが似てる。
実写部分とアニメとのつなぎが自然でストーリーに違和感なく溶け込んでいることに感心しました。小池朝雄さんのナレーションが効果を上げています。
ゲストも含めた声優さんが豪華。今回上映の3本だと、レギュラーの3人以外に、納谷悟朗、麻上洋子、鈴木弘子、野沢那智らの声が聴ける。
マルコ役の富山敬さんはマルコの少年時代と青年時代とで声と演技を変えていましたね。さすがです。
主題歌・挿入歌の作詞作曲は小椋佳さんですが、劇中音楽は『空飛ぶゆうれい船』の小野崎孝輔さんが手がけています。
編成は厚くないようですが、民族音楽っぽい曲があったり、主題歌・挿入歌アレンジがあったりと多彩。シンプルながら詩情豊かな音楽がなかなかいい。
で、観ていて思ったのですが、これは、全部ではないかもしれないけど、毎回、音楽を録っているのでは? 同じ曲が流れないし、絵と音がみごとに合っている。
NHKは連続ドラマでも90年代まで毎回映像に合わせて音楽を録っているので、ありうることだなぁと。
ほかのエピソードも音楽に注意して観て(聴いて)みたいと思います。
トークは、アナウンサーの渡邉あゆみさんの司会で、ゲストに小椋佳さんとアジア史に詳しい立教大学教授・上田信さんが登壇。
小椋佳さんの主題歌・挿入歌作りの裏話や物語の舞台となる中央アジアの歴史や放送当時の状況などが聞けました。
ちなみに9話しか再放送されないのは、今、権利関係で中国で録った映像が放送できないからだとか。
いつの日か全話が観られることを願ってます。
「プレミアムカフェ」での放送は3月13日~15日の3日間、朝9時から。同日深夜に再放送があります。お見逃しなく~
https://www.nhk.or.jp/archives/hakkutsu/features/202301/
追悼・松本零士さん
漫画家の松本零士さんが2月13日に亡くなりました。
『宇宙戦艦ヤマト』は自分の人生を変えた大きな作品です。
『ヤマト』がなければ、今の仕事はやってなかったと思うくらい。
それ以前から『少年マガジン』や『COM』『SFマガジン』などで松本零士作品に触れていました。
『宇宙戦艦ヤマト』の放送が始まるとき、「あの松本メカが動くのか!」とワクワクしたことを覚えています。
独特のペーソスのあるSF短編や戦場まんがシリーズが好きでした。
1977年に劇場版『宇宙戦艦ヤマト』が大ヒットし、次々と松本零士原作アニメが制作されました。
なかでも『宇宙海賊キャプテンハーロック』『銀河鉄道999』は音楽的にも後世に大きな影響を残した作品です。
『ヤマト』『ハーロック』『999』がなかったら、今のアニメ音楽はなかったか、違った進化の道筋をたどっていたでしょう。
自分が関わった仕事では、「松本零士音楽大全」で『宇宙戦艦ヤマト』『宇宙海賊キャプテンハーロック』『銀河鉄道999』(TVシリーズ&劇場第1作)を、「銀河鉄道999 エターナル・エディション・シリーズ」で『銀河鉄道999(TVシリーズ)』の構成を手がけたのが大切な思い出です。
たくさんの心に残る作品をありがとうございました。
ご冥福をお祈りいたします。
☆漫画家・松本零士さん、85歳で死去(Yahooニュース)
菅野祐悟 交響曲第2番@サントリーホール
サントリーホールで菅野祐悟さんの「交響曲第2番 “Alles ist Architektur”-すべては建築である」を演奏するというので聴きに行ってきました。
東京交響楽団の第707回定期演奏会。原田慶太楼指揮。
行ってよかった。
さすがサントリーホール。すばらしい音でした。
CDで聴くのとは大違い。
交響曲第2番は「建築」をテーマにした作品。
第1楽章から第4楽章まで、それぞれにサブテーマが割り当てられています。
メインとなるモティーフを提示する力強い第1楽章、躍動的なスペイン風の第2楽章、弦合奏を中心とした抒情的な第3楽章、メインモティーフを反復し、さわやかに雄大に締めくくられる第4楽章。それぞれに聴きごたえがある。
菅野さんは「40分間聴衆を飽きさせない」という純音楽にはめずらしい(?)目標を掲げて作曲に臨んだそうで、そこここに、映像音楽的な耳にひっかかる工夫がほどこされています。2階席で聴いていたので、奥の方でパーカッションが活躍しているようすが確認できました。サウンドトラックみたいに聴こえる部分があるのも楽しいところ。菅野さんが現場でブラッシュアップしてきた技の集大成ともいえます。
東京交響楽団の演奏もすばらしかった。
演奏が進むうちに、オーケストラ全体がひとつの楽器のように聴こえる瞬間があり、うっとりしました。生でオーケストラを聴く醍醐味です。
菅野さんが音で表現しようとした「光」がたしかに見えた気がしました。
プログラムには菅野さんと指揮の原田さん、コンサートマスターの水谷晃さんらとの座談会が掲載されていて、なかなか貴重。
プログラムは東京交響楽団の公式サイトで公開されているので、Webでも読むことができます。
https://tso.futureartist.net/Symphony2301
終演後、ロビーに現れた菅野さんにご挨拶。
思えば、2007年12月に開催された菅野さんの最初のコンサートもここ、サントリーホールの小ホール(ブルーローズ)だったんですよね。
そのときも聴きに行って、初めて菅野さんにご挨拶した記憶があります。
今回は堂々の大ホール。いわば凱旋公演。
菅野さんの音楽を追いかけてきたひとりとして、感無量です。
フィルフィルコンサート「Musical! Musical!! Musical!!!」
2月11日、ミューザ川崎で開催されたフィルフィル(Film Score Philharmonic Orchestra)コンサート「Musical! Musical!! Musical!!!」に行ってきました。
タイトルどおり、テーマはミュージカル映画。
『グレイテスト・ショーマン』(2017)
『アラジン』(1992)
『ノートルダムの鐘』(1996)
『オペラ座の怪人』(1986)
『キャッツ』(1981)
『レ・ミゼラブル』(1985)
『ウエスト・サイド・ストーリー』(1957)
と80年代以降の新しめの作品を中心にしたセレクト。
休憩を挟んで3時間あまり、充実の内容でした。
ディズニーのアニメ映画『アラジン』『ノートルダムの鐘』は組曲でオーケストラ音楽をたっぷり聴かせるフィルフィルらしい構成。
やっぱりアラン・メンケンはいい曲書くなあ。
ミュージカルの音楽はキャッチーで華やかで踊れる曲が多く、客席も盛り上がります。
いちばん驚いたのは歌手やコーラスグループが次々と登場して、ミュージカルナンバーを歌ってくれたこと。
ミュージカル特集だから当然ではあるのだけれど、これまでのフィルフィルコンサートを聴いてきた私は、「おおーっ」と思いましたよ。
フィルフィルといえば『スター・ウォーズ』やジョン・ウィリアムズなどのシンフォニックな音楽が中心で、コンサートでヴォーカル曲を取り上げることはほとんどなかったのです。
今回はがらっと雰囲気が変わりました。聴衆の顔ぶれもこれまでと違う印象で、新しいファンを開拓したのではないでしょうか。
歌という新たな武器を手に入れたフィルフィルはどこへ向かっていくのか。次回も楽しみです!
「全プリキュア展」に行ってきた
池袋サンシャインシティで開催中の「全プリキュア展」に行ってきました。
平日昼間なら空いてるだろうと思ってましたが、すごい人出でした。
ほぼ95%が女子。10代~20代くらいの若い方が多い(学校は休みなのか?)。あとは親子連れ。男子はほとんどいない。
六本木で開催されていた『美少女戦士セーラームーン展』と比べても、ぐっと来場者の年齢が若くなり、女子率が高い印象です。
エントランスにフォトスポット(ここで渋滞してた)。
プリキュアの歴史を紹介するパネル。
各シリーズのキャラクターデザイナーたちによる20周年描き下ろしイラストギャラリー(ここも大混雑)。
歴代プリキュア主人公(主にピンク)の等身大フィギュア。
各シリーズを設定画や映像、おもちゃなどで紹介する「全プリキュアメモリーズ」コーナー。
秘蔵ギャラリー(企画書、台本、絵コンテ、原画など。撮影不可)。
変身シーンをマルチモニターで見せるシアター(人ごみでぜんぜん観られず)。
物販コーナー。
といった構成。
「THE仮面ライダー展」ほどではないですが、すごい量の展示でした。
メインは「全プリキュアメモリーズ」。
各シリーズのブースが作品のモチーフやテーマにちなんだデザインになっていて、なかなか凝ってます。『ふたりはプリキュア』は白と黒、『プリキュア5 GoGo!』はバラ、『ハートキャッチプリキュア!』は花、『スマイルプリキュア!』は本棚、『ドキドキ!プリキュア』はトランプ、『プリンセスプリキュア』は宮殿風、『プリキュアアラモード』はお菓子、『スター☆トゥインクルプリキュア』は宇宙、といった具合。
プリキュアだけでなく悪役キャラの紹介パネルもあって、うれしかったです。
来場者が想い出のプリキュアのコーナーに足を止めて、記念写真を撮ったり、話し込んだりしている光景がほのぼします。
プリキュアの仕事をしていても、本来のターゲットである子どもたちの反応を観る機会はほとんどないので、「ああ、愛されていてよかったなぁ」と。
「全プリキュア展」は、プリキュアとともに育った子どもたちやシリーズを見守ってきた方たちが集う、壮大な同窓会みたいなものですね。
ただ、みんな熱心に観ているので、あまり展示に近寄ってじっくり観られなかった。
ちなみに音楽商品の展示はありませんでしたよ。残念…。
等身大フィギュアは太秦映画村に展示されていたものと同じでした。ということは、今、太秦では主人公を除くプリキュアたちが勢ぞろいしているのでしょう。あれを全部持ってくるには展示スペースが足りないから、しかたないか。でも、ホールをもうひとつ借りて展示したら、案外盛り上がったのではと思います。
物販コーナーでは目当ての図録が売り切れ…。
記念に限定グッズのコースターを1個買いました。
「全プリキュア展」東京会場の開催は2月19日まで。
https://www.toei-anim.co.jp/all_precure_exh/
池袋駅からサンシャインシティまでの複数の通りに、「全プリキュア展」にちなんだ街路灯フラッグがずらりと飾られてます。しかも、よく見ると商店街別に違うタイプのフラッグを掲示してる。
風が強かったのと日が暮れてきたので、撮りきれませんでした。コンプリートはまたの機会に(コンプリートするのか?)。
「テス」4Kリマスター版
映画『テス』4Kリマスター版を観てきました。
1979年公開の英仏合作映画。ロマン・ポランスキー監督。
原作はトマス・ハーディの『ダーバヴィル家のテス』。
19世紀末のイングランドを舞台に、貧しい農家に生まれた娘テスのたどる過酷な運命を描く物語です。
このたび4Kリマスター版が作られ、劇場で特別公開中。
初めて観たのはたぶん80年代。名画座にかかっていたのを観たと思います。
ロマンティックな文芸映画と思って観に行ったので、メランコリックな展開と衝撃的なラストに意表をつかれました。
なにが気に入ったのか、その後、もう一度劇場で観たことを覚えています。
3時間近くある長い映画なのに。
私の中では名作とか感動作というのとはちょっと違う、心にひっかかる映画。青春時代の思い出の1本でもあります。
主演のナスターシャ・キンスキーがひたすら美しい。
彼女を観るための映画と言ってもいいくらい。
もちろんそれだけではなく、19世紀の農村の風景を再現した映像と細部までこだわったポランスキーの演出も見ごたえがある。
今回4Kリマスターされて、さぞ鮮やかな美しい映像になったろうと期待してましたが、けっこう彩度を抑えた渋めの画です。
なにせ青空が見えるシーンがほとんどない。もちろんそれは監督のねらいで、天候もまたテスの運命を暗示しているわけです。
なんといってもポランスキー監督は『ローズマリーの赤ちゃん』を撮った人だから…。牧歌的な情景の中に暗い影が忍び寄って来るような、そこはかとない不安に映画全体が満たされている。最初に観たときも、そこにすごく惹かれた気がします。
映画の記憶っておそろしいもので、何10年ぶりかで観たのに、けっこう細部を覚えていましたね。
先の展開がわかっているので、「ああ、ここが映画的暗示になっている」と気づいて感心することが多かった。
そして、フィリップ・サルドの音楽がすばらしい。
これは初見のときから感動しました。メインタイトルの場面からうっとりします。
「これぞフランス映画音楽!」みたいな、もの悲しく美しいメロディーの曲。演奏はカルロ・サヴィーナ指揮のロンドン・シンフォニー・オーケストラ。
当時、すぐにサントラレコードを買って、愛聴してました。
劇場特典の『スクリーン』の表紙を使ったチラシもゲット。
ポストカードを売ってたので記念に買ってきました。
まだ観られる劇場もあるみたいなので、興味ある方はぜひ劇場で。
https://tess-movie.com/