劇伴倶楽部 > 腹巻猫ブログ > エバン・コール オーケストラコンサート

エバン・コール オーケストラコンサート

エバン・コール オーケストラコンサート

9月7日(日)、東京国際フォーラム ホールCで開催された「エバン・コール オーケストラコンサート ~音楽と旅の現在地~」に足を運びました。

とてもよかったです。

アニメやドラマ音楽で活躍するアメリカ出身の作曲家エバン・コール(EVAN CALL)の作品を集めたコンサート。

アニメ『ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』『葬送のフリーレン』の曲を多めに、ドラマ、アニメ、大阪万博パビリオン用音楽などを織りまぜた構成。
どれもコンサート用にリアレンジされていて、聴きごたえがあります。

あまり演奏される機会のない、ドラマ『螢草』や『燕は戻ってこない』などの曲を聴けたのがよかったですねー。

※ふだんは「エヴァン・コール」と表記しているので、以下、そう書きますね。

これまで人気作品のイベント的なコンサートはありましたが、エヴァン・コールの名を冠したソロコンサートの開催は初。
エヴァンのMCはやや緊張気味でしたが、積み重ねた仕事への手ごたえと音楽制作・公演制作に関わった人たちへの感謝が感じられて、胸を打たれました。

エヴァンはアメリカで本格的な映画音楽の手法を学んだ作家。伝統的な映画音楽の手法がしっかり受け継がれている。近年のハリウッド映画音楽はそのへんが大味になっているのだけれど、日本で劇伴を書いているエヴァンにオーソドックスな手法が継承されているのが興味深い。
現代的だと思うのは、クラシック的であってもしっかりビートが感じられる曲を書いていることです。

もうひとつ気がつくのは、ケルト音楽などの民族音楽を取り入れた作品が多いこと。
『ヴィオレット・エヴァ―ガーデン』にも『葬送のフリーレン』にもドラマ『螢草』や『鎌倉殿の13人』にもそれが感じられる。
エヴァンの生まれ育った土地はアメリカでもだいぶ郊外の田舎だそうで(実家は野生馬を4頭飼っているとか)、その環境がエヴァンの音楽に反映されている気がします。

演奏はとてもよかったのですが、PAが使われたことは賛否があるかも。
スタジオ録音を前提としたサウンドトラックの音を再現するにはPAは不可欠。
しかし、あのサイズのホールでフルオーケストラの編成なら、PAなしでも十分聴こえると思う。
エヴァンのクラシック的な繊細な音には生音が向いている。
ただ、女声ヴォーカルやアイリッシュフルート、マンドリンなどが入った特殊な編成で、しかもそれらが重要な役割を担っているとなると、PAは必要。
ホール後方の席だと、よいバランスで聞こえたようです。
私の席は前から4列目。なので、PAと生音が重なって、ちょっと厚塗りの音に聴こえました。
とはいえ、不満を言うほどではない。

この公演はライブ録音されていて、12月にライブ音源がリリースされるそうです。

エヴァン・コールさんとは『劇場版 ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』の仕事で取材する機会がありました。
日本のアニメの仕事をとても愛していて、「溜め録り」という、本来、海外にはない映像音楽の作り方にも順応して、魅惑的な音楽を作り続けているのがすばらしいです。
ソロコンサートの開催を心よりお祝いします。

次はバンドスタイルの曲などもセットリストに入れたコンサートを期待したいです。

エバン・コール/Evan Call Orchestra Concert ~ 音楽と旅の現在地
作曲︓Evan Call
指揮︓⽥尻真⾼
管弦楽︓東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
コーラス︓Barzz

<ゲストミュージシャン>
堤博明(ギター、マンドリン、バンジョー)
野口明生(ホイッスル、イリアン・パイプス)
麦野優衣(ヴォーカル)

<MC> 小林奈々絵

プログラム

セットリスト