「テス」4Kリマスター版
映画『テス』4Kリマスター版を観てきました。
1979年公開の英仏合作映画。ロマン・ポランスキー監督。
原作はトマス・ハーディの『ダーバヴィル家のテス』。
19世紀末のイングランドを舞台に、貧しい農家に生まれた娘テスのたどる過酷な運命を描く物語です。
このたび4Kリマスター版が作られ、劇場で特別公開中。
初めて観たのはたぶん80年代。名画座にかかっていたのを観たと思います。
ロマンティックな文芸映画と思って観に行ったので、メランコリックな展開と衝撃的なラストに意表をつかれました。
なにが気に入ったのか、その後、もう一度劇場で観たことを覚えています。
3時間近くある長い映画なのに。
私の中では名作とか感動作というのとはちょっと違う、心にひっかかる映画。青春時代の思い出の1本でもあります。
主演のナスターシャ・キンスキーがひたすら美しい。
彼女を観るための映画と言ってもいいくらい。
もちろんそれだけではなく、19世紀の農村の風景を再現した映像と細部までこだわったポランスキーの演出も見ごたえがある。
今回4Kリマスターされて、さぞ鮮やかな美しい映像になったろうと期待してましたが、けっこう彩度を抑えた渋めの画です。
なにせ青空が見えるシーンがほとんどない。もちろんそれは監督のねらいで、天候もまたテスの運命を暗示しているわけです。
なんといってもポランスキー監督は『ローズマリーの赤ちゃん』を撮った人だから…。牧歌的な情景の中に暗い影が忍び寄って来るような、そこはかとない不安に映画全体が満たされている。最初に観たときも、そこにすごく惹かれた気がします。
映画の記憶っておそろしいもので、何10年ぶりかで観たのに、けっこう細部を覚えていましたね。
先の展開がわかっているので、「ああ、ここが映画的暗示になっている」と気づいて感心することが多かった。
そして、フィリップ・サルドの音楽がすばらしい。
これは初見のときから感動しました。メインタイトルの場面からうっとりします。
「これぞフランス映画音楽!」みたいな、もの悲しく美しいメロディーの曲。演奏はカルロ・サヴィーナ指揮のロンドン・シンフォニー・オーケストラ。
当時、すぐにサントラレコードを買って、愛聴してました。
劇場特典の『スクリーン』の表紙を使ったチラシもゲット。
ポストカードを売ってたので記念に買ってきました。
まだ観られる劇場もあるみたいなので、興味ある方はぜひ劇場で。
https://tess-movie.com/
「かがみの孤城」ティーチイン上映会
1月22日、新宿ピカデリーで開催されたアニメ映画『かがみの孤城』のティーチイン上映会に行ってきました。
『かがみの孤城』は辻村深月さんの原作小説を原恵一監督がアニメ化した作品。学校に行けなくなった中学生の少女・こころが、鏡の向こうにある孤城に招かれ、6人の少年少女とともに城の中に隠された「望みが叶う鍵」を探す物語です。
異世界冒険ものと思いきや、少年少女の繊細な心理を描く、ファンタジーミステリー。
原作は、『思い出のマーニー』や『秘密の花園』といった児童文学の名作の系譜を継ぐ、みごとな作品。それをアニメならではの表現を使って映像化した原恵一監督の手腕に唸らされます。原監督の作品の中では、同じファンタジーでも『バースデー・ワンダーランド』よりも『カラフル』に印象が近い。富貴晴美さんの音楽も秀逸でした。
劇場ですでに観ていたのですが、今回は、原恵一監督と音楽の富貴晴美さんによるトークセッションということで参加。
予定の時間をオーバーしておよそ45分、貴重な話が聞けました。
原監督と富貴さんのコンビ作品は4作目。話は原監督と富貴さんとの出会いから始まり、本作の音楽のことへ。
メインテーマはなかなか原監督のOKが出ず、12回も書いたそうです。そのときの監督の注文が「あなたはまだ7人の子どもたちの魂を救えていない」というもので、容赦なくハードルを上げる原監督の粘りもすごいし、それに応えた富貴さんもすごい。結果生まれたのが「かがみの孤城」と名付けられたメインテーマです。最初はやさしい曲を書いていたけれど、「救う」という気持ちを前面に出したテーマにしてOKが出たとのこと。
クライマックスには9分以上の長い曲「全員の真実」が流れます。この曲も何度かデモをやりとりして仕上げたそう。途中エレキギターを使うパートがあるのは監督のリクエストだったなど、作曲秘話が語られました。
原監督はアフレコ台本と音楽メニューを持参してきて、そこに書き込まれたメモを見ながら、音楽演出にまつわる裏話を紹介。ダビング時に音楽の音量をカットに合わせて調整したり、音楽が始まる位置を微妙に調整したりする話は興味深く、監督が音楽による演出を非常に繊細に考えていることがわかって有意義でした。
ただ、原監督の話が熱が入りすぎて、富貴さんのコメントがあまり聞けなかったのは少し残念。
観客とのQ&Aでも音楽に関する質問がほとんどなかったのがもったいなかった。
しかし、最後の挨拶のときに富貴晴美さんが「私も学校に行けない子どもだったんです」と話し始めて、聞き入りました。
富貴さん、小学校のときにいじめられていたことがあり、本作の主人公・こころのように朝になると体調が悪くなり学校に行けなくなったそうです。でも、母親は「いやだったら学校行かなくてもいいよ」というすばらしい対応で、毎日うちで映画ばかり、1日に8本も観ていたそう。「だから、今こうやって映画音楽家になれているのかな」と、この日いちばんのいい話が聞けました。
「辛かったら逃げていいんです」という富貴さんの言葉が胸にしみました。
エンニオ・モリコーネ 映画が恋した音楽家
観ました!
映画『エンニオ・モリコーネ 映画が恋した音楽家』
2020年に亡くなった作曲家・エンニオ・モリコーネの生涯を描いた映画。
上映時間157分。
観る前は「長いか?」と思ったけど、ぜんぜんそんなことなかった。
あっという間でした。
モリコーネの少年時代からアレンジャー時代、映画音楽デビュー、そして、数々の作品を生み出して世界的人気を得るまでを、インタビューとドキュメント映像と映画の映像でたどる構成。
ジョゼッペ・トルナトーレ監督の編集のうまさもあって、まったく飽きない。
モリコーネの最期5年間に密着した映像、モリコーネを敬愛する監督、作曲家、音楽家らのインタビュー、そして、モリコーネが担当した映画の映像が巧みな編集で繋げられ、実にスリリングで刺激的。
モリコーネが監督とどんな話をしたか、どんな発想で音楽を作ったか、映画音楽と純音楽の関係についてどう考えていたか、など、創作の秘密にも迫った映画音楽ファン必見の内容です。
今、「モリコーネの魅力」と問えば「美しいメロディー」と誰もが言いそうですが、モリコーネ音楽のルーツには現代音楽(実験音楽・前衛音楽)がある。それもしっかり押さえられていてよかった。
それにしても、名だたる監督の映画の映像がふんだんに登場することのぜいたくさよ。
トルナトーレが本作を監督するにあたってプロデューサーに最初に頼んだことが、「モリコーネが関わった映画のシーンを自由に使わせてほしい」ということだったとか。静止画ではなく、映画の映像と音声がたっぷり挿入されている。
『荒野の用心棒』『シシリアン』『1900年』『ミッション』『ニュー・シネマ・パラダイス』『アンタッチャブル』といった著名な名作から、『アルジェの戦い』『ポケットの中のこぶし(握り拳)』『死刑台のメロディ』といった渋い作品まで幅広く紹介されていて感動しました。
これも観た、これも観た、これはサントラだけ聴いた、とか、いちいち記憶が掘り返されます。
観たことも聴いたこともない(私にとっては)珍しい作品も登場。
タイトルだけ知っていて、「これがあの作品かぁ」と思うこともしばしば。
あちこちで言ったり書いたりしてることですが、小学生のときにラジオから流れてくるモリコーネの音楽を聴いてなかったら、そして、モリコーネのベストアルバムを買わなかったら、サントラファンになってなかったかもしれない。
もう50年もモリコーネの音楽を聴いてきたことになります。
ありがとうモリコーネ。
映画の中では当然ながら、モリコーネの音楽がずっと鳴っている。音楽録音やコンサートなどの演奏風景もたっぷり紹介される。
モリコーネの音楽に包まれ、映画の記憶に心満たされる至福の時間でした。
パンフレットには富貴晴美さんの作曲家ならではの視点のコメントが載っていて、これを読むだけでも買う価値あります。
☆映画『エンニオ・モリコーネ 映画が恋した音楽家』公式サイト
https://gaga.ne.jp/ennio/
アバター:ウェイ・オブ・ウォーター
映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を観ました。
2009年に公開された映画『アバター』の続編です。
上映時間3時18分。
しかし、長いという印象はあまりありません。
3時間超の映画というより、全4~5話のシリーズものを一気観したような印象。
たっぷり異世界にひたってきました。
IMAXの大スクリーンで観るのにぴったりの作品です。
前作のときも思ったのですが、アン・マキャフリイの「パーンの竜騎士」シリーズっぽいなぁと思う描写がところどろこあります。
今回は『竜とイルカたち』という海が舞台の一編を思わせる。途中まで、そのイメージを重ねながら観てました。
パンドラの海の生き物たちと原住民(ナヴィ)との交流が見どころです。
ただ、最後はやっぱりアクション(というか戦争)。
アメリカ映画だし、監督が『エイリアン2』のキャメロンだからこうなるんだろうけど、そういうのはもういいかな、という感じ。
異世界紀行みたいな部分がもっと観たかったなぁ。
「ブループラネット パンドラ編」みたいな映画。
それだとヒットしないと思うけど。
『Do It Yourself!!』のすごいところ
あまり話題になってないけど、今放送中のアニメで私がいちばん楽しみにしているのが、『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』なのです。
https://diy-anime.com
新潟、三条市を舞台に、DIY部に集う高校生の少女たちがものづくりを通して友情を深め、成長していく物語。
まず、ものづくり(工作)を題材にしているのがいい。
私も子どもの頃から工作大好き。『まんが道』を読んで幻灯機を作ったり、自作のおもちゃを作ったりしていた。もちろん模型もよく作ったし、宇宙戦艦ヤマトの最初のプラモデルが出たときは、艦底のゼンマイボックスを切り取り、テレビで観るプロポーションとディテールに寄せて改造したりした。
『Do It Yourself!!』では「材料を集めて、加工して、組み立てる」という過程が丁寧に描かれていて、工作心をくすぐられる。
それに、できあいのものですまさず、「ほしいものは作ればいい」の精神でものづくりに取り組む彼女たちの姿は、人生の指針にもなっている。
それから、なにげにこの作品、絵作りのレベルが高い。
レイアウトにセンスがある。構図がびしっと決まっている。空間の捉え方が的確で、演出効果も考えられている。あおりや俯瞰の構図がたびたび出てくるけれど破綻がない。技術が高く、クレバーなレイアウトです。
そして、作画がいい。ズバリ言って絵がうまい。シンプルな線なのに、デッサンがしっかりしていて、ちゃんと骨格と立体感が感じられる。
特に手と腕の描き方がうまい。手を描くのってめちゃ難しいんですよ。形が複雑だし、誰もが見慣れているので、絵が崩れたりごまかしたりするとすぐにわかる。本作には工具を使う手の描写がたくさん出てくるけど、どのカットもさまになっている。観ていて思わず「うまいなぁ」と感心してしまう。ものづくりがテーマの作品なので、工作する手の描写にリアリティがあることが物語の説得力につながっています。
色彩設計もいい。明るくカラフル。ほとんど影を使わないのもさわやかで好印象。髪の毛の内側が意表をつく色で塗られているのも面白い。
とにかく、観ていて気持ちがいい、刺激を受ける作品です。
音楽については、最近の作品には珍しく、オープニング主題歌とエンディング主題歌と劇中音楽(劇伴)を佐高陵平さんがすべてひとりで担当しているのがすばらしい。擬音(オノマトペ)を使ったオープニングが秀逸。サントラ盤が来年2月に出るんだそうです。今から楽しみにしてます。
※場面写はモニターをiPhoneで撮っているのでモアレが出ているのはご愛敬。
映画『時には昔の話を』
映画『時には昔の話を 森山周一郎 声優と呼ばれた俳優』
https://tokiniha.ver-bijou.com
アップリンク吉祥寺で観てきました。
俳優・声優の森山周一郎さんのドキュメンタリー映画です。
(森山さんは声優と呼ばれることを好まなかったそう)
完成・公開は森山さんが亡くなったあとになってしまいましたが、もともとは森山さんの証言を残すために企画された作品。
生前の森山さんのインタビュー映像がたっぷり観られます。
先日観た『その声のあなたへ』同様に黎明期の吹替の話が聞けて興味深いですが、それ以上に森山さんが語る激動の芝居人生がすごく面白い。
劇団東芸が立ち上がり、森山さんがそこに参加して役者として活躍を始める。
舞台は私もなじみ深い高田馬場。
森山さんが思い出の土地をめぐる場面があり、「あー、あそこか!」と思うことしばしば。
森山さんと関わった方々へのインタビューも森山さんの人柄が偲ばれてしみじみとします(笑えるエピソードも多し)。
上映後、小原正至監督と音楽を担当したシンガーソングライターのサカノウエヨースケさんのトークがあり、音楽作りの裏話が聞けて貴重でした。
監督と細かくやりとりしながら作っていったとか。
監督がテンプトラック(仮の曲)を付けていたシーンにサカノウエさんがけっこう攻めた曲を付けたら、監督が曲に合わせて編集を変えたとか。
メインテーマはサカノウエヨースケさんがオリジナル曲として発表していた「NEW HOPE」をアレンジした曲だそうです。
主題歌は加藤登紀子さんが『紅の豚』の主題歌「時には昔の話を」を新録音。その経緯はパンフレットに書かれています。 パンフレットの表紙は小原正至監督が描いたイラスト。アニメ映画も作る方なので絵もうまい。
アップリンク吉祥寺での上映は11月3日までなので、気になる方はお早目に。
小原監督(左)とサカノウエヨースケさん(右)
劇場に展示されている『風の谷のナウシカ』と『紅の豚』のビジュアルボード
(森山周一郎、加藤登紀子、島本須美のサイン入り)
パンフレットの表紙
以下余談。
字幕で「プロデューサーの鏡」って表記されてたのが気になりました。
わざと? 「鑑」の誤記でしょうね。
サカノウエヨースケさんは「ドキュメンタリーの劇伴」という言い方をしてました。 ドキュメンタリーだと「劇伴=劇の伴奏」でない気がしますが、やっぱり現場ではそう言いますよねー。「サウンドトラック」が本来の意味を離れて背景音楽をさす言葉として定着したようなもので。
映画『その声のあなたへ』
映画『その声のあなたへ』を劇場で観ました。
2013年に亡くなった声優・俳優の内海賢二さんの人生をたどったドキュメンタリー(一応)映画です。
内海賢二さんといえば、『魔法使いサリー』のサリーちゃんのパパをはじめ、『新造人間キャシャーン』のブライキング・ボス、『ガンバの冒険』のヨイショ、『Dr.スランプ アラレちゃん』の則巻センベエなど、数々の個性的なキャラクターを演じた方。吹替洋画世代の私は、スティーブ・マックイーンの吹替や007シリーズの悪役の声(007本人も演じてるけど)が記憶に焼き付いています。
映画『その声のあなたへ』はレジェンドから若手まで、声優や音響監督が内海賢二の仕事ぶりと人柄を語る内容。その証言から、黎明期から現在までの「吹替」の歴史も浮かび上がってきます。
大変貴重な証言が聞けるし、内海さんがいかに愛されていたか、また人を愛したかも知ることができて感動的です。
しかしこの映画、ドキュメンタリーではあるけれど、聴き手はアニメイトタイムズの記者・結花という架空の人物であるという複雑な構造。
『永遠の0』みたいな構成で、内海賢二さんに興味を持った結花が取材を始めるというストーリーじたてになってます。観ているうちに気にならなくなるのですが、フィクションなのかドキュメントなのか、最初のうちはちょっと混乱します。
まあ、正攻法のドキュメンタリーだと、もっと普段着のインタビューというか、照明や衣装なども気を使わない方がリアルになるので、これはこれで映画的でよかったかもしれません。
結花を演じるのは、自身も賢プロダクション(内海賢二が立ち上げたプロダクション)に所属する声優の葵あずささん。映画の冒頭に『魔法陣グルグル』をみて声優にあこがれる少女の姿が描かれますが、これはフィクションではなく葵あずささん本人の思い出を再現したものらしいです。映画が進むにつれ、葵あずさが演じる結花なのか素顔の葵あずさなのか、境界があいまいになっていきます。
いっそ「葵あずさが聞く内海賢二」というドキュメンタリーにしたほうがよかった気もしますね。
内海さんが出演した作品の映像の引用などもあり、そのままパッケージにはできないかもしれないので、気になる方は劇場でぜひ。
☆内海賢太郎×榊原有佑監督『その声のあなたへ』対談インタビュー〈前編〉
☆内海賢太郎×榊原有佑監督『その声のあなたへ』対談インタビュー〈後編〉
劇場版Gのレコンギスタ
『劇場版Gのレコンギスタ IV』と『同 V』を観てきました。
実は不覚にも『III』を劇場で見逃したので、以降はソフトか配信でもいいかな、と観るのを迷っていたのです。
が、『IV』の上映終了間近になってサントラ盤が劇場限定販売と知り、「これは観て買うしかない」と(購入には座席指定券か半券が必要)。
幸い、アマプラで『III』を観ることができ、木曜日に『IV』の最終上映回を、金曜日に『V』を鑑賞。
気合を感じる映画でした。劇場で観て正解です。
計算されたレイアウト、テンポの速い編集、細部まで気を配った作画など、集中力が必要な映画で、ちょっと目を離すと置いて行かれそう。しかし、これが新しい世代の観客には気持ちよいテンポと密度なのかもしれません。
富野さん元気だ。
「これを見せたい、伝えたい」という気持ちがびしびし伝わってくる。劇場の空間で観てこそ心に迫って来るものがありました。
目的のサウンドトラックもゲット。
ハセガワダイスケが歌う「カラーリング バイ G-レコ」を含む全10曲約30分を収録。
菅野祐悟さんの音楽はクラシック的な香りがあり、ドラマティックな中にも品がある。トゲトゲした曲がないのがGレコらしい。3分を超える長い曲が多く、聴きごたえあります。
売り切れた劇場もあるそうですので、気になる方はお早目に。
新宿ピカデリーでは、1階ロビーで『Gレコ』を特集したディスプレイを展示中。『Gレコ』Blu-rayジャケットイラストとともに、『Gのレコンギスタ』『伝説巨神イデオン』『戦闘メカザブングル』等の富野作品の企画書を展示。「富野由悠季展」風で、なかなかマニアックでした。
TAROMAN
7月18日からNHK Eテレで深夜に放送されている帯番組『TAROMAN』がなかなかイカれてます(ほめてます)。
岡本太郎の絵画や彫刻をモデルにした怪獣(番組内では奇獣と呼ばれている)が登場する「特撮活劇」(公式サイトでの呼称)です。岡本太郎の展覧会のPRも兼ねた番組のようです。
TAROMANというのは70年大阪万博のシンボル「太陽の塔」が人間型になったみたいな巨大ヒーロー。
もともと岡本太郎の作品は60~70年代当時から怪獣っぽいと言われてました。実際、岡本太郎は映画『宇宙人東京に現わる』で宇宙人をデザインしているし。シュールレアリスムや古代美術の流れを汲む点でも、ウルトラ怪獣に通じるところがあります。
だから、岡本太郎の作品が怪獣になるのは古くからの怪獣ファンにとってはすごく納得できることでした。今までやりたくても誰も大っぴらにはやらなかっただけでしょう。
『TAROMAN』の面白いところは、昭和の特撮ヒーロー番組という設定で作られているところ。画角も昔のテレビのサイズに合わせたスタンダードだし、映像もざらざらしたフィルムっぽい感じに仕上げられている。
やってることは相当むちゃくちゃです。TAROMANはまともに怪獣と戦うわけではない。番組自体が「なんだこれは!」という岡本太郎の言葉をテーマに作られているので、ヒーロー番組とはかけはなれたシュールな展開ばかり。
でも、それが爽快です。岡本太郎イムズともいうべき、常識破壊の爆発力がある。いろいろなことに気を使って無難な展開に終始してしまう物語や映像作品に対するカウンターになっています。
あと、最近の特撮番組はヒーローばかりが注目される傾向がありますが、以前紹介した『KJファイル』といい本作といい、怪獣に焦点を当ててるのが「怪獣ファン」としてはうれしいです。
全10話なので今週で終わってしまいますが、「まとめて再放送」が予定されているので、見逃した方はぜひ観てほしいです。
「まとめて再放送」は、
7月30日(土)深夜25時(第1話~第5話)、31日(日)深夜24時45分~
KJファイル
7月10日深夜から始まった1回5分のミニ番組『KJファイル』が予想以上に面白かった。
☆公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/anime/kjfile/
「KJファイル」とは「怪獣ファイル」。
毎回オリジナル怪獣を紹介するアニメ番組です。
ほほう、ゲキメーションか。
『銭天堂』でもやってるし、いまやそんなに珍しくないぞ。
でも、レトロな昭和挿絵風の怪獣描写がなかなかいい。
とか思ってたら、怪獣のテーマソングが流れてきて、呆然。
「怪獣のうた」ではなく、登場している怪獣専用のオリジナルソングなのだ。
1回5分で怪獣が2体紹介される。
もう1体のほうもオリジナルのテーマソングが流れる。
毎回、登場する怪獣の歌を作って流すらしい。
ふつうにBGMを作るより手間がかかってるのではないか。
怪獣をテーマにしたアニメ番組ということは知っていたのだけど、『ゴジラSP』みたいな、もうちょっとシリアス寄りかと思っていたので、あっけにとられてしまった。
しかし、このテイスト、60年代のソノシートみたいで懐かしい。
昭和挿絵風ビジュアルも怪獣の歌も、1怪獣2分という長さも、ソノシートっぽい。
サントラ(ソングコレクション)が出るならソノシート風に作ってほしいな。