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映画『大怪獣のあとしまつ』

映画『大怪獣のあとしまつ』

なにかと話題の映画『大怪獣のあとしまつ』を観ましたよ。

酷評されてる…という噂を聞いたので、身がまえて観に行ったのですが…

すげー、面白かったんですけど!

笑えない…という声も聞きますが、そもそもコメディ映画ではないですよね。
パロディでもない。
しいて言えば、風刺…?
あえて微妙な空気をねらってる印象を受けました。
でも、そこに主眼があるわけではない。

特撮ファン、怪獣ファン向けというわけでもない。
ジャンル分けしないほうがいい。
たぶん、「こういう映画」って期待して観に行くとがっかりすると思うんです。
「どこへ向かっているんだろう?」と無心に観たほうが楽しめる。
あまり特撮や怪獣に思い入れのない人のほうが、素直に観られるんじゃないかな。

私は、三木聡監督が演出したTVドラマ『時効警察』シリーズをずっと観ていて、好きだったので、抵抗なく楽しみました。
ちょっとクセのあるオフビートな感じは本作でも変わりません。

怪獣の死体をテーマにしたエピソードは『ウルトラマンティガ』にもあったし、映画『パシフィック・リム』にも怪獣の死体を金儲けに利用する設定があってなかなか興味深かったですが、本作は、怪獣の生態や生物学的な面にはあまり踏みこまない。
怪獣が象徴的な存在として扱われています。

だから、怪獣ものというより、SFとして面白いと思いました。
J.G.バラードの「溺れた巨人」を怪獣に置き換えて、思いついたアイデアを加えて、娯楽映画にしちゃったみたいな。

特撮・怪獣ものって、いろいろな形があっていいと思うんですよ。
70年代にはテレビの特撮ヒーロー番組が花盛りでバラエティに富んだ作品が観られました。
90~2000年代には深夜放送やミニシアター系の映画で、やはりさまざまな特撮SF作品が公開されました。
『大怪獣のあとしまつ』も特撮映画の可能性を広げる作品、新しい特撮・怪獣ファンを獲得する作品になることを願ってます。

で、上野耕路さんの音楽が、こちらは期待どおり、すごくよかった。
リリカルなところもあるけど、現代音楽的な手法をふんだんに使って、混沌とした音像を作り出す。
そのカオスな空気感が映画に合っています。
上野さんの特撮映画音楽は1989年の『帝都大戦』以来でしょうか。
アニメ『ファンタジックチルドレン』(2004)の音楽がすごくよくて、それですっかりファンになりました。
これは、サントラ買いますよ。

大怪獣のあとしまつ オリジナル・サウンドトラック

 : アルバム・ジャケット

「地球外少年少女」前編

「地球外少年少女」前編

『電脳コイル』の磯光雄監督の新作アニメ映画『地球外少年少女』前編を観ました!

本来は30分×全6話からなる連続もの。
Netflixで全話一挙配信されているのですが、特別上映の形で3話ずつ前後編に分けて劇場で公開されるのです。
配信でも観られるけど、あえて劇場で体験。

すごいすごい。

これは劇場で観るべき作品ですよ。

近未来の宇宙ステーションを舞台にしたサバイバルもの。
磯光雄監督ならではのSFマインドあふれる設定と緻密な描写で、思いがけない事故に巻き込まれた少年少女の冒険が描かれる。

真っ暗な劇場の中、大スクリーンの映像に目を凝らし、空間を満たす音響を浴びていると、この上ない臨場感、没入感を味わえます。

久々にセンス・オブ・ワンダーを感じましたよ。

唯一の問題は、続きが気になって後編の公開まで待てないってこと!

配信で続きを観るか…。
いやいや、劇場で体験してこその感動を味わいたいんだから……。

うーん

入場者特典

「さよなら銀河鉄道999」ドルビーシネマ版

「さよなら銀河鉄道999」ドルビーシネマ版

『さよなら銀河鉄道999 -アンドロメダ終着駅-』ドルビーシネマ版を観ました。

さすが35mm対応作品。ドルビーシネマの力が存分に発揮された映像と音響を堪能しました。
(※作画は1作目も本作もスタンダードサイズ。ただ、1作目はTVアニメと同じサイズで作画されているのに対し、本作は劇場用の大判セルで作画されているそうです)

大判セルがそのままスクリーンに投影されたような美麗な映像にうっとり。 細かい作画までくっきり見えるのに感激です。
特に印象深かったのは、背景美術の繊細な中間色の表現。 1作目のコントラストの強いタッチとは違い、淡い水彩画風のタッチになっているのが明瞭に感じられます。前半の廃墟のくすんだ色彩と後半の大アンドロメダのカラフルな描写との対比も鮮烈。今までそんなこと思ったことないのですが、一瞬、「あれ、『セロ弾きのゴーシュ』みたい…」と思ってしまいましたよ(どちらも美術が椋尾篁、原画に才田俊次が参加)。

音楽はヴァイオリンソロの高音からコントラバスの低音までしっかり響いて心地よい。 アクション曲よりもメーテル登場シーンなどのリリカルな曲のほうが、歌謡曲のアレンジですぐれた仕事が多い東海林修の本領発揮!という感じ。

見どころのひとつである大アンドロメダ突入シーンは、パワーアップされた映像と音楽の効果でトリップ感が味わえます。

実は、昔からこの映画、ストーリーが盛りだくさんすぎて、ちょっとわかりにくい映画だな…と思っていたんです。
が、 今回、映像のすみずみまでくっきり見えて、セリフも聴き取りやすくなり、無心に観たおかげで、「あ、そういうことか」といろいろ合点がいきました。
長年疑問に思っていたことが自分の中で解決して、映画の評価が変わりました。
(今までちゃんと観てなかったってことで、ごめんなさい)

公開から40年ぶりにして、映画の真価を知った想いです。ドルビーシネマ版、観た甲斐がありました。

幻の完全版『殺されたスチュワーデス 白か黒か』

幻の完全版『殺されたスチュワーデス 白か黒か』

シネマヴェーラ渋谷で映画『殺されたスチュワーデス 白か黒か』を観ました。
脚本家・猪俣勝人の特集上映「あなたは猪俣勝人を知っているか」の1本です。

『殺されたスチュワーデス 白か黒か』
1959年公開
 監督・原作・脚本:猪俣勝人
 音楽:伊福部昭

実際に起きたスチュワーデス殺人事件を題材にした作品。
あくまでフィクションを謳っていましたが、封切り後間もなく配給が打ち切られ、終盤約30分がカットされた短縮版しか残っていないと言われていました。
その作品の完全版が発見され、フィルム修復を経て公開以来の上映にこぎつけたというのです。

音楽は伊福部昭。伊福部ファンにとっても、長らく音楽の全貌を知ることができない幻の作品でした。
サスペンスかと思いきや、讃美歌風の伊福部昭っぽくない(しかし、たしかに伊福部昭の響きがする)テーマや民族音楽調の曲などが聴けて興味深いです。
いちばんの注目は、やはりカットされていたという終盤の音楽。 回想場面に流れる暗い情念を感じさせる音楽が圧巻です。

シネマヴェーラ渋谷の上映は2月4日までですが、これから鑑賞の機会が増えることを希望します。

ポスター

「銀河鉄道999」ドルビーシネマ版

「銀河鉄道999」ドルビーシネマ版

一部劇場で上映中のドルビーシネマ版『銀河鉄道999』を観ました。

最近では昨年11月のシネマ・コンサートでも観ているので、あまり集中できないかなと思ってたんですが…

まったくそんなことはなく、映画に没入してしまいました。
うわさにたがわぬ、すばらしい映像。
細部までクリアだし、黒がきりっと締まって、全体の色彩も深みを増して見える。
何度も観ているのに、これまで見えてなかったことに気づいたりして、今まで観ていたのはなんだったのかと。
いくつかのシーンで、体の内からぞくぞくっと感動が湧き上がってきました。

音響も、セリフと音楽、効果音の分離がくっきりして臨場感抜群です。
音楽がモノラルになったりステレオになったりするのが若干気になりますが、いろいろ大変だったんでしょうね。

すでに『さよなら銀河鉄道999』も上映が始まっています。もちろん、こちらも観る予定。

ドルビーシネマ版『銀河鉄道999』(東映の特設サイト)

シチリアを征服したクマ王国の物語

シチリアを征服したクマ王国の物語

観たよ、観ましたよ。
『シチリアを征服したクマ王国の物語』
TMSとミラクルヴォイスが配給しているフランス・イタリア合作のアニメ映画です。

https://kuma-kingdom.com/

実に私好みの作品でした。

原作のディーノ・ブッツァーティはイタロ・カルヴィーノと並ぶイタリア幻想文学作家。
昔から好きな作家のひとりで、『タタール人の砂漠』や『七人の使者』などを読んで、不条理な世界にくらくらした思い出があります。

この『クマ王国の物語』は子ども向けに書かれたものなので、お話はぐっとわかりやすい。しかし、その裏に透けて見える寓意や風刺にブッツァーティらしさを感じます。突然不条理な運命に直面してしまうキャラクターも彼の小説の主人公を思わせる。

で、なんといっても画ですよね。
絵本のように大胆で美しく、ちょっとユーモラスな画が動く驚きと快感。
はじめのうちは牧歌的なんだけど、怪物が出てきたり、サスペンスの要素が強くなると、がぜん不穏な雰囲気がただよう。
誇張された構図や濃く落ちる影なんかにドイツ表現主義の影響を感じました。

今回は吹替版で鑑賞。伊藤沙莉さんの好演をはじめ、なかなかすばらしかったです。
次は原語で観てみようかな。

下の写真は新宿武蔵野館のロビーで。

kuma_pan_s.jpg

サンダーバード55/GOGO

サンダーバード55/GOGO

「完全新作」をうたって公開中の映画『サンダーバード55/GOGO』を劇場で観ました。

オリジナル版の日本初放送は1966年。NHKでした。私は直撃世代で、『ウルトラマン』と並ぶお気に入り番組でした。

今回の映画は本放送当時イギリスで発売されていたオーディオレコード(いわゆるドラマ盤)をベースに映像化したもの。
人形やミニチュアなどを当時の技術そのままに再現しての新撮です。本当にオリジナルの雰囲気のままに仕上がっていて感涙もの。メイキングを観るとスタッフが「まったく新しいものを作るより、再現するほうが難しい」と言っていて、あえてレトロテクノロジーに挑む苦労がしのばれます。

「完全新作」とうたわれていますが、一部に旧作のフィルムも使われています。それだけに新撮部分が違和感なくなじんでいるのがすばらしい。音声は当時のレコードをベースにしているので当然モノラル。画角もスタンダードサイズというこだわりよう。いちファンに戻って楽しみました。吹替もよかった(ペネロープ役の満島ひかりさんが好演)。
これは一種のお祭り映画と言いますか、壮大なファンムービーみたいなものですね。

劇場のほか、配信でも観られますので、ファンの方はぜひご覧ください。

公式サイト ⇒ https://tb55movie.com/

2020年にRambling RECORDSから『サンダーバード』のオリジナル音源のサントラ盤が発売されています。何度目かのCD化。カヴァーも合わせるとこんなに何度も『サンダーバード』の音盤が出るのは日本だけでは?と思ってしまいます。

サンダーバード オリジナル・サウンドトラック

 : アルバム・ジャケット