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腹巻猫のブログです。
主にサウンドトラックやコンサート、映像作品などについて書いています。

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追悼・藤子不二雄A先生

追悼・藤子不二雄A先生

漫画家の藤子不二雄A先生が亡くなりました(Aは丸の中にAが正式表記)。88歳でした。

まだまだお元気と思っていたので驚きました。
本当に残念です。

小さい頃から怪獣好きだった私は、小学校低学年時はモノクロ版アニメ『怪物くん』に夢中。もちろん漫画も読みました。

小学校高学年になり、つけペンでマンガを描くことを覚えた頃は、石森章太郎の『マンガ家入門』と藤子不二雄の『まんが道』がバイブルに。

小学~中学生時代に連載されていた『魔太郎がくる!!』は単行本全巻そろえて読みました。

長じては、『笑ゥせぇるすまん』をはじめとするブラックで 怪奇な作品を追いかけて、「奇妙な味」を楽しませてもらいました。

『まんが道』(最初に出た単行本で現在「あすなろ編」と呼ばれているもの)で強く印象に残っているのが、主人公2人が漫画対決をするときに使った手作りの幻灯機。
漫画の中でその構造が図解されています。箱の中に電球と反射板とレンズを仕込んだだけのシンプルな仕組み。小学生時代は模型や工作が好きだった私は、これを自作して、友だちといっしょに自分で描いた漫画を壁に映したりして楽しんでました。
『まんが道』って、そういう、子どもの心にも強く働きかけるような、「読んだら手を動かさずにいられない」熱気、エネルギーが詰まっていたんです。

サウンドトラックの仕事では、日本コロムビアでアニメ『笑ゥせぇるすまん』のサントラを作らせていただいたのが思い出になりました。

数々の作品をありがとうございました。
心よりご冥福をお祈りいたします。

藤子不二雄(A)さん死去、88歳(読売新聞オンライン)

ナイトメア・アリー

ナイトメア・アリー

ギレルモ・デル・トロ監督の新作『ナイトメア・アリー』を観ました。

内容をよく知らなかったので、てっきり、ダークなファンタジー映画だと思っていたのです。
それというのも、昔『夢喰いメリー』というアニメがあって、その主人公の名がメリー・ナイトメア。夢魔と戦うヒロインの話です。だから、この映画も「ナイトメア・アリー」というキャラクターが登場する話かと…。
映画を観ながら、「誰がアリーなんだろう…」と思っていましたよ。

実際はファンタジーではなく、フィルム・ノワールというか、犯罪映画です。
しかし、現実と幻想があいまみえる、デル・トロらしい映画でした。

原題は「Nightmare Alley」。「Alley」は小路、路地のことで、「ナイトメア・アリー」は「悪夢の路地」みたいな意味になります。
1947年に同じ原作を映画化した『悪魔の往く町』という映画が公開されているそうですが、そちらは未見。

序盤はカーニバルの見世物小屋が舞台。ちょっとレイ・ブラッドベリ的香りがあり、デル・トロらしい。
映画のメインは、カーニバルにいた主人公が都会に出てきてから。第二次大戦直前の不安な世情を背景にしたクライムサスペンスの趣。ブライアン・デ・パルマあたりが好きそうな感じです。

主人公は人の心を読む読心術師。読心術といってもトリックです。野心を持った男が読心術を使って人の心をあやつり、のしあがろうとする。 読心術という幻想を現実にしようとし始めるわけです。
が、結局、自分が生み出した幻想に手痛いしっぺ返しをくらい、破滅していく。
かいつまむとそんな話。

「ナイトメア・アリー」=「悪夢の路地」とは、主人公の人生の比喩だと思いますが、この映画全体が、悪夢の中をさまよっているような妖しい雰囲気に満たされています。
映像が暗い。空はどんより曇っているか、雪や雨が降っている。 室内は光が射していても半分は影になっている。主人公はいつもその影の側にいるか、顔に深く影が落ちている。
これも主人公が闇に囚われていること、そして、この世界が悪夢であることの象徴的表現でしょう。

登場人物の中では、なんといってもケイト・ブランシェットが演じる謎めいた精神科医が印象的でした。彼女は、いってみれば、主人公を誘う夢魔であり、メフィストフェレスの役割ですね。

音楽はもともと『シェイプ・オブ・ウォーター』のアレクサンドル・デスプラの参加が予定されていたそうですが、スケジュールの都合でネイサン・ジョンソンに交代。弦楽器中心のオールドスタイルの音楽で効果を上げています。

ジャケット画像

「明日ちゃんのセーラー服」と「その着せ替え人形は恋をする」

ジャケット画像

もう4月になってしまいましたが、3月で放送終了し、あちこちで“ロス”の声が聞こえるアニメ『明日ちゃんのセーラー服』と『その着せ替え人形は恋をする』の話。ちなみに「明日ちゃん」は「あけびちゃん」、「その着せ替え人形」は「そのビスク・ドールは」と読みます。

私もTV放送と動画配信でしっかり観てました。

2作ともアニメ制作がCloverWorksということで、ちょっと似たテイストがあります。特に女性を描く作画の密度の高さ。上気する肌や瞳の輝きや髪の毛の表現、ディテールにこだわった衣服の描写など。そういえば、どちらも衣装が重要な要素となる作品です。

『明日ちゃんのセーラー服』は背景も含めた映像が細やかで美しい。そして、布の質感や重さまで感じさせる、フェティシスティックに見えるほどの衣服の描写に目をひかれます。 舞台が女子高ということもあり、秘密の日常をのぞき見ているような瞬間があってドキドキします。
物語は格別ドラマティックなことも起こらず、地方の女子高校生の日常をゆったりと描く、ふんわりした作品。
しかし、それが目的ならここまでフェティシスティックな描写は必要ないはず。
観ているうちに、これは一種のアイドル映画、ファッション映画なのだと思いました。
ヒロインを魅力的に見せる、衣装を美しく見せる、実写でいうフォトジェニックみたいなことをアニメでやろうとしている。
映像が美しいほどに、過ぎていく時間や若さへの愛しさがこみあげてくる。これもアイドル映画の常道です。

いっぽうの『その着せ替え人形は恋をする』はもう少しポップな作品ですが、コスプレを題材にしているのが特別で、面白いところ。こちらも着替えのシーンがよく出てくるので、観ていてドキドキすることが多い。
しかし、主人公の男子・五条くんがドキドキしたり、うろたえたりしてくれるので、うしろめたさが薄まります。
最初は、あまりぱっとしない男子に美少女が恋してくれる、願望充足アニメ(私が勝手に呼んでいる)かと思っていたのです。
ところがこれも観ているうちに印象が変わって、むしろ逆なのだと思うようになりました。
コスプレ好きのヒロイン・海夢(まりん)が恋をする。自分の気持ちにとまどいながらも、小さなことに一喜一憂し、距離を近づけようとする。
その過程が着替えシーン以上にドキドキします。 少年向けに見えて、実はすごく少女漫画的。『その着せ替え人形は恋をする』って、内容を的確に表現したうまいタイトルだと思いますね。

音楽もよかった。
『明日ちゃんのセーラー服』の音楽は昨秋のアニメ『見える子ちゃん』の音楽を担当したうたたね歌菜さん。ピアノを使った瑞々しい音楽が素敵でした。『見える子ちゃん』の音楽に注目していたので、『明日ちゃん』は放送前から楽しみにしていたのです。
『その着せ替え人形は恋をする』の音楽は中塚武さん。こちらはコミカルな場面が多いこともあり、ギターやシンセを使った軽快な音楽が心地よい。私が中塚さんの名前を覚えたのは『セクシーボイスアンドロボ』というドラマでした。

サントラはどちらもBlu-ray/DVD同梱でのリリース。単体リリースでないのは残念ですが、盤になるだけありがたいと思うべきかもしれません。
『明日ちゃんのセーラー服』は限定版第4巻~第6巻、『その着せ替え人形に恋をする』は限定版Vol.1とVol.3にサウンドトラックが同梱されます。

ジャケット画像

トキワ荘マンガミュージアム企画展「鉄腕アトム」

トキワ荘マンガミュージアム企画展「鉄腕アトム」

トキワ荘マンガミュージアムの特別企画展「鉄腕アトムー国産初の30分アニメシリーズー」を観覧してきました。

隣接する公園では桜が満開。

公園の桜

1963年にスタートしたTVアニメ『鉄腕アトム』にフォーカスした展覧会です。
コンパクトな展示ですが、絵コンテの原本(青焼きでなく)が展示されていて驚きました。演出家のセレクトが、手塚治虫、林重行(りんたろう)、杉井儀三郎、山本暎一、出崎統、富野喜幸としびれます。

ほかにも、制作進行表やカット袋、ガリ版刷りのシノプシスとか、マニア心をくすぐるものが並んでいて、なかなか刺激的でした。

第1話の上映や関連商品の物販もあります。
キャラクター設定を使った大判ポストカードがファン心理をついてきてニクイ。3種類買ってしまいました。

展示は4月10日まで。詳細はトキワ荘マンガミュージアム公式サイトをご覧ください。
https://tokiwasomm.jp/exhibition/2021/11/post-34.php

大判ポストカード

勝利確定! ~ウルトラヒーロー バトル・ミュージック・コレクション

「勝利確定!」ジャケット画像

届きました~!(買いました)

「勝利確定! ~ウルトラヒーロー バトル・ミュージック・コレクション」

トヨタトモヒサさん渾身の企画・構成・解説によるCD、全3巻。

ウルトラマンの戦闘シーンに流れるBGMのコンピレーションです。

昭和編が1枚、平成編が2枚組、ニュー・ジェネレーション編が2枚組とボリュームたっぷり。この配分に時の流れを感じますね。

ポイントのひとつは劇場作品も含めていること。こういう企画では劇場作品がよけられちゃうことも多いので、並べて聴けるのは新鮮だし、ありがたい。
ほかにも、同一モチーフのヴァリエーションを並べたり、ボーナストラックで変身(登場)ブリッジをまとめたり、解説で各曲の使用場面にも言及したりと、ファンのツボをついてくる作りに頭が下がります。

昔、高島幹雄さんの企画で「ウルトラマン テーマ音楽コレクション」というCDの構成と解説のお手伝いをしたことがありますが、なかなか、そこまではできませんでした。

ウルトラマンシリーズの歴史を音楽でたどるアイテムとしても恰好ですね。 CDを聴いてから本編を観返すという楽しみ方もありそう。

細かいことで感心したのは、昭和編は1枚なのにCDのケースを少し厚めのものにして、2枚組の平成編、ニュー・ジェネレーション編と背の幅をそろえてあること。棚に並べたときの統一感を考えての配慮でしょう。メーカーの気合を感じます。
CDが売れない時代ですが、こういう企画が通って実現するのは本当にうれしいです。

コロムビアの通販サイトで3巻セットを買うと、特典の三方背収納ケース付き!(なくなり次第終了)
https://shop.columbia.jp/shop/g/gS4165/

特典付き3巻セット

「平家物語」はすごかった

平家物語 オリジナル・サウンドトラック

フジテレビの「+Ultra」枠で放送されていたアニメ『平家物語』が終了しました。

最終回まで観ました……。

すごいものを見せてもらったなぁ。
脚本も映像も演出も、すべてが高次元。
くらくらして咀嚼が追い付きません。

放送を録画していたのですが、いつも配信動画をパソコンで観てました。
集中して観たいから。
音もヘッドフォンで聴きたい。
そのくらい、密度が高い。

一見、日本の伝統絵画風に見える渋い画作り。でも、キャラクターはシンプルな線ながら立体感をもって描かれているし、構図も平面的に見えて奥行きがある。計算された構図、さりげなく画に陰影を与えるエフェクトなど、細かく見れば見るほど、考え抜かれ、手をかけて映像化されているのがわかります。

物語も、びわというふしぎな目を持つ少女を設定したことで、多層的な視点を持つものになっている。びわには登場人物の行く末が見えている。それは視聴者であるわれわれの視点でもある。そのことが「平家物語」の無常観を際立たせます。
びわには定められた運命を変えることはできない。スティーブン・キングの『デッド・ゾーン』を思わせます。でも、びわは平家の人々を記憶し、語り継ぐことで、この世から消えたものを永遠のものにしようとする。人の世の営みとは、人生とはなんなのか、そんなことを考えさせられます。

と、とりとめもなく書いてみましたが、この作品はもっと奥深い。まだまだ読み解けません。

個人的には、キャラクター原案に高野文子さんが参加しているのがツボでした。
なので、『わたしたちが描いたアニメーション「平家物語」』も電子書籍版を買いました。
電子版特典に「高野文子キャラクター原案・イメージスケッチ 2P(紙書籍版未収録カット)」が付いてくるのです。

わたしたちが描いたアニメーション「平家物語」表紙

あと驚嘆すべきは牛尾健輔さんの音楽。
『平家物語』に電子音楽……。予想外というか、牛尾さんが参加した時点で予想はできたのですが、それでも「こうくるか!?」という驚きがあります。
サントラはCDとアナログ両方買いましたよ。
これもまだじっくり聴けていない。
3/26発売の『CONTINUE Vol.76』に「山田尚子(監督)×牛尾憲輔(音楽)10,000字対談」が載るそうなので、それ読んで、本編再見しながら聴こうと思います。

CONTINUE Vol.76表紙

ドライブ・マイ・カー

ドライブ・マイ・カー

話題の映画『ドライブ・マイ・カー』を観ました。

実は私は村上春樹がちょっと苦手…。
でも、映画はとてもよかったです。

上映時間3時間(179分)の長さをまったく感じない。
映像と芝居の密度の高さ、そして、サスペンス的要素と語り口の巧みさがあいまって、まさに優秀なドライバーの運転に身をゆだねて車に乗っている気分で観ました。

映画の中では、過去と現在、演劇と現実、嘘と真実、死者と生者、さまざまな要素が重なり合い、物語が二重三重に見えてくる。
そういうところは村上春樹っぽい(私のイメージです)。

風景を巧みに切り取った映像や環境音を生かした音響も印象的。
特に役者の「声」が圧倒的な存在感で響いてきます。
映画の中で「声」はとても重要な役割を担っているので、これは演出のねらいなのでしょう。

石橋英子さんの音楽もよかった。
メロディを聴かせるタイプの音楽ではなく、サウンド感重視の演出。
音楽の入りと抜きのタイミングが絶妙です。芝居をじっくり見せるところは音楽を入れず、緊張がふっとゆるむタイミングで音楽がすっと入ってくる。
実に効果的だし、気持ちいい。

最後のエピローグの場面で、現実に引き戻されました。
劇中劇のチェーホフの芝居の台詞が今われわれが生きる現実と重なってきます。

ミラクルガール オリジナル・サウンドトラック

: アルバム・ジャケット

《SOUNDTRACK PUB》レーベル第29弾 「ミラクルガール オリジナル・サウンドトラック」 を3月30日に発売します。
https://www.soundtrackpub.com/label/cd/STLC045.html

1980年に放送されたTVドラマ『ミラクルガール』の初のサウンドトラック・アルバムです。

『ミラクルガール』は『プレイガール』『ザ・スーパーガール』の路線を受け継いだ、東映制作の女性探偵アクションドラマ(お色気アクションとも言われる)。
由美かおるを主演に迎え、探偵事務所オフィスミラクルに所属する7人の女性探偵の活躍を描く痛快作。痛快作と言ってもシリアスなエピソードもあり、コメディあり、 ホラーありと、バラエティに富んだエピソードが楽しかったです。

音楽は同時期に東映のTVドラマ『非情のライセンス』も手がけていた渡辺岳夫。
キラキラしたシンセの音やハモンドオルガンなどを使ったミラクルサウンドをお聴きください。女性アクションものということで、ちょっと『キューティーハニー』っぽいところもあります。
由美かおるが歌う主題歌も収録。
BGMは全曲初商品化です!

Amazonの予約がまだできませんが、ARK SOUNDTRACK SQUAREさんで予約受付中です。 https://arksquare.net/jp/detail.php?cdno=STLC-045

この女性探偵アクション路線では、『ザ・スーパーガール』のサントラを日本コロムビアで作らせていただいたのも思い出深いです。こちらの音楽は馬飼野康二さん。
Columbia Sound Treasure Series ザ・スーパーガール オリジナル・サウンドトラック

 ザ・スーパーガール

その次の作品のサントラを自分で作ることができたのも、ご縁だなぁと。

ちなみに『ミラクルガール』は今、YouTubeのTOEI Xstream theaterで、毎週1話ずつ配信されています。 https://www.youtube.com/playlist?list=PLWOibgbqbs8M1amBL35PtiJCn7LjXP2vc

安彦良和 機動戦士ガンダム THE ORIGIN展

安彦良和 機動戦士ガンダム THE ORIGIN展

EJアニメミュージアムで開催中の「安彦良和 機動戦士ガンダム THE ORIGIN展」に行ってきました。

安彦さんといえば、大胆にして繊細な、魔法のようなラインと強弱で描かれる描線。
それが生で見られるのですから、もう眼福、眼福です。
高校生時代に『勇者ライディーン』の設定画を初めて見たとき(コピーでしたけど)、目が吸い付けられましたものね。
このあいだ放送された「漫勉neo」でも、その驚異のペンタッチ…ではなくて筆遣いが注目されていました(安彦さんは筆で漫画を描いてます)。

なので、私にとっては、カラー原画よりも白黒原画のほうがうれしい。
今回は漫画版『THE ORIGIN』の原画が多数展示されているので、白黒画がたっぷり見られる。
興奮しながら会場を回りました。
あ、カラー画ももちろんいいですよ。

最後に安彦さんの仕事場を再現したコーナーがあり、その脇に、鉛筆で描かれたラフや下書き(ネーム)が展示されています。
それも興味津々でした。
こういうものが生で見られるのが、展覧会の醍醐味です。

ランチに角川食堂の「THE ORIGIN展」コラボメニュー「安彦先生お気に入り!お稲荷さん&出汁巻き卵定食」。出汁巻きたまごが予想以上のボリュームでした。

コラボメニュー

「THE ORIGIN展」は、ところざわサクラタウンの角川武蔵野ミュージアム3F、EJアニメミュージアムで3月21日まで開催中。

ブルーサーマル

ブルーサーマル

公開中のアニメ映画『ブルーサーマル』を観ました。

いい映画でした。

観客が私含めて2人しかいなかったのがもったいない。

あまりにもったいない。

ただ、東映チャンネルでよく流れているスポットCMを見ても、「お、観よう!」という気にあまりならないんです。
なかなか魅力をうまく伝えきれないもどかしさがあります。

大学の航空部(グライダースポーツ部)を舞台に、初めてグライダーに乗る新入部員の女の子が活躍する話。
とまとめると、「近頃よくある女の子部活ものかー」と思ってしまう。
けれど、そういうのとはだいぶん違う。

かといって、「さわやかなスポーツ青春アニメ」とまとめてしまっては、ありきたりすぎて、こぼれるものが多い。

これは、

ズバリ言って、

「エースをねらえ!」ですよ。

作者もスタッフも意識してないと思います。
でも、相通じる要素がある。
100分の映画の中に成長と感情のドラマが、それも群像ドラマがしっかり詰まっています。
空を駆けるようなスピード感で。

1クールか2クールのシリーズものでやってほしいなぁ。

映像作品としては、空を飛ぶこと、風に乗ること、その爽快感、自由さが、アニメならではの表現で描かれているのが大きな魅力です。
グライダーを操縦する描写がもう少しあればよかったと思うけれど、映画の限られた時間ではそこまでは踏み込めなかったのでしょう。
主観で空を飛ぶ描写がもっと見たかった。

音楽が劇場用アニメの音楽を本格的に手がけるのは初めてという海田庄吾さん。
パンフレットに海田さんのコメントはないけれど、今発売中の『月刊Newtype(ニュータイプ)』(2022年4月号)の別冊付録が1冊まるまる『ブルーサーマル』特集で、海田さんのインタビューが載っています。緻密な音楽プランをもとに作曲されていることがわかる。
それを読んでから映画を観ると、より楽しめます。

実は、大学に入って最初にクラブ勧誘の説明会を聞いたのが、航空部だったのです。
小さな部室で活動内容を紹介する手作りビデオを見せてもらったりしたものの、結局、入部はしなかった。
でも、一度くらいグライダーに乗せてもらえばよかったかなぁと思っています。
そういう機会は、それ以来なかったから。
映画を観ながら、そんなことを思い出していました。

その母校の航空部は、映画のエンドクレジットに「取材協力」として名前が出ています。

ニュータイプ付録

プロフィール

腹巻猫 はらまきねこ

PROFILE画像

サウンドトラック構成作家、文筆家。
サウンドトラック・アルバムの構成(選曲・曲順・曲名決め)を専門で手がけるほか、映像音楽に特化した音楽ライターとして、作曲家インタビューやCD/Blu-ray/DVD解説書・雑誌記事・書籍の執筆等で活動。

お仕事の依頼等は⇒ contact@soundtrackpub.com