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腹巻猫のブログです。
主にサウンドトラックやコンサート、映像作品などについて書いています。

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映画『その声のあなたへ』

映画『その声のあなたへ』

映画『その声のあなたへ』を劇場で観ました。

2013年に亡くなった声優・俳優の内海賢二さんの人生をたどったドキュメンタリー(一応)映画です。
内海賢二さんといえば、『魔法使いサリー』のサリーちゃんのパパをはじめ、『新造人間キャシャーン』のブライキング・ボス、『ガンバの冒険』のヨイショ、『Dr.スランプ アラレちゃん』の則巻センベエなど、数々の個性的なキャラクターを演じた方。吹替洋画世代の私は、スティーブ・マックイーンの吹替や007シリーズの悪役の声(007本人も演じてるけど)が記憶に焼き付いています。
映画『その声のあなたへ』はレジェンドから若手まで、声優や音響監督が内海賢二の仕事ぶりと人柄を語る内容。その証言から、黎明期から現在までの「吹替」の歴史も浮かび上がってきます。
大変貴重な証言が聞けるし、内海さんがいかに愛されていたか、また人を愛したかも知ることができて感動的です。

しかしこの映画、ドキュメンタリーではあるけれど、聴き手はアニメイトタイムズの記者・結花という架空の人物であるという複雑な構造。
『永遠の0』みたいな構成で、内海賢二さんに興味を持った結花が取材を始めるというストーリーじたてになってます。観ているうちに気にならなくなるのですが、フィクションなのかドキュメントなのか、最初のうちはちょっと混乱します。
まあ、正攻法のドキュメンタリーだと、もっと普段着のインタビューというか、照明や衣装なども気を使わない方がリアルになるので、これはこれで映画的でよかったかもしれません。

結花を演じるのは、自身も賢プロダクション(内海賢二が立ち上げたプロダクション)に所属する声優の葵あずささん。映画の冒頭に『魔法陣グルグル』をみて声優にあこがれる少女の姿が描かれますが、これはフィクションではなく葵あずささん本人の思い出を再現したものらしいです。映画が進むにつれ、葵あずさが演じる結花なのか素顔の葵あずさなのか、境界があいまいになっていきます。
いっそ「葵あずさが聞く内海賢二」というドキュメンタリーにしたほうがよかった気もしますね。

内海さんが出演した作品の映像の引用などもあり、そのままパッケージにはできないかもしれないので、気になる方は劇場でぜひ。

『その声のあなたへ』公式サイト

内海賢太郎×榊原有佑監督『その声のあなたへ』対談インタビュー〈前編〉
内海賢太郎×榊原有佑監督『その声のあなたへ』対談インタビュー〈後編〉

特別展アリス

特別展アリス

森アーツセンターギャラリーで開催されている「特別展アリス— へんてこりん、へんてこりんな世界 —」に行ってきました。

先日、「ベルサイユのばら展」に行ったとき、隣の会場で開催していたので気になってたのですよ。
気が付けば10月10日の会期終了が迫っていたので、今行くしかないと。

以下、公式サイトより引用。
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『不思議の国のアリス』の世界とその魅力をご紹介する展覧会です。ジョン・テニエルの挿絵から、ディズニー映画のアニメーションセル、ティム・バートン監督による映画『アリス・イン・ワンダーランド』、アリスに影響を受けたサルバドール・ダリや草間彌生らの作品、バレエなどでの舞台衣装、ヴィヴィアン・ウエストウッドらによるファッションなど、アリスにまつわる約300点の展示物が一堂に会します。英国ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)を皮切りに世界巡回中の展覧会に、日本オリジナル展示も加えた「へんてこりん、へんてこりんな世界」が2022年夏、六本木ヒルズに出現します。
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ちょっとスケジュール的に厳しかったのですが、行ってよかった。
児童文学好き、幻想文学好き、美術好き、映画好きなんかにはたまらない内容でした。

なお、会場内は一部「撮影禁止」のマークが付いた展示品以外は撮影可。
ただし、展示品1点のみ、2点のみの撮影は不可で、「必ず3点以上を画面に収めてください」という制限が設けられています。

会場は大きく5つのパートに分かれていて、「第1章 アリスの誕生」ではルイス・キャロルと原作関連の写真、草稿、イラスト、本やグッズなどを展示。
キャロルが撮った写真やアリスのモデルになったアリス・リドゥルの写真もあります。
『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』の初版本や校正刷り、ジョン・テニエルの挿絵の習作、原画、版画、各国のアリス翻訳本などが見られて眼福。スワヒリ語版なんて珍しいものもありました。
日本のものでは金子國義さんのアリスの絵などが展示されていました。

アリス展 写真1

アリス展 写真2

アリス展 写真3

アリス展 写真4

アリス展 写真5

アリス展 写真6

アリス展 写真7

不思議の国に迷い込んだような回廊を抜けると、「第2章 映画になったアリス」のコーナーへ。 古今の『アリス』の映像化作品に関する展示です。
初期のモノクロ映画から、有名なディズニーのアニメ、ティム・バートンの『アリス・イン・ワンダーランド』も。
日本アニメーション制作のTVアニメ『ふしぎの国のアリス』ももちろん紹介されています。

アリス展 写真8

アリス展 写真9

続いては「第3章 新たなアリス像」のコーナー。
アリスを題材にした、あるいはアリスにインスパイアされた現代アートの展示です。
衝撃を受けたのが、サルバドール・ダリが描いた『不思議の国のアリス』の挿絵。1969年に限定2500部の署名入りで出版されたんだそうです。 ダリがそうとう気合入れて描いているのが伝わってくる作品。
「対決!シュールレアリスム×シュールレアリスム」
みたいで、見入ってしまいました(撮影は不可)。

アリス展 写真10

アリス展 写真11

アリス展 写真12

次は「第4章 舞台になったアリス」のコーナー。
舞台化された『アリス』のポスターや舞台写真、衣装デザインなど、貴重な展示が並びます。

アリス展 写真13

アリス展 写真14

アリス展 写真15

最後に「第5章 アリスになる」と題した、アリスをモティーフにしたファッションのコーナー。

アリス展 写真16

アリス展 写真17

文学・アート・映画・演劇・ファッションなどを横断する不思議の森をさまようような体験。
めちゃめちゃ楽しかったし、刺激を受けました。

図録はなく、7月8日に発売された『アリスーへんてこりん、へんてこりんな世界―』(玄光社)という本が公式書籍として売られています(一般書店でも購入可)。内容は、展覧会とまったく同じではないようです。

「特別展アリス— へんてこりん、へんてこりんな世界 —」は10月10日まで。
https://alice.exhibit.jp

ベルサイユのばら展

ベルサイユのばら展

少し前のことになりますが、六本木・東京シティビューで開催中の「誕生50周年記念 ベルサイユのばら展 -ベルばらは永遠に-」に行ってきました。

会場入ってすぐのスカイギャラリーが宮殿のようにディスプレイされていて、「ベルばら」気分が盛り上がります。

ベルばら展 写真1

ベルばら展 写真2

ベルばら展 写真3

ベルばら展 写真4

ベルばら展 写真5

導入部の回廊に展示されているのが「ベルばら年表」。
原作連載から始まって、各種単行本発売、舞台公演、実写映画公開、アニメ放映、DVD発売、Blu-ray発売、ムック発売、DVD-BOOK発売、コラボイベントなど、細かく記載されています。
21世紀に入ってからのドラマCD発売やアニメ版サウンドトラック完全版の発売も押さえられていて、そうとうのベルばらマニアの仕事か、と感心しました。私が企画・構成・解説を手がけたCD「ベルサイユのばら 音楽集[完全版]」の記載もありました。

メインは池田理代子先生の原画展示。
1色だけでなく、2色、4色の原稿も展示されているのがいい。美しく迫力たっぷりの絵に引き込まれます。
撮影は不可。

続いて、宝塚歌劇版「ベルばら」とアニメ版「ベルばら」のコーナー。
コンパクトですが、ツボを押さえた展示でファンも納得の内容。
アニメ版は設定画、台本、原画、セル画、ハーモニーなどを展示。解説パネルで、原作とアニメ版の違い、2人の監督の演出の違い、アニメ版ならではの魅力などに触れていて、「わかってるな…」と唸らされました。
宝塚歌劇のコーナーのみ撮影可です。

宝塚コーナー 写真1

宝塚コーナー 写真2

宝塚コーナー 写真3

最後に「これからのベルばら」のコーナー。
最新情報として、新作アニメ映画の設定画が数枚展示されています。さて、どうなるか、興味津々です。
この新作アニメ映画関連も撮影可でした。

新作アニメコーナー 写真1

新作アニメコーナー 写真2

新作アニメコーナー 写真3

なお、展覧会の図録はなく、9月15日に発売された書籍『愛と感謝の50周年 ベルサイユのばら アニバーサリーブック』(集英社刊)が図録代わりになっています(展覧会の内容そのままではありません)。

会場に隣接するカフェではコラボメニューが楽しめる「ベルサイユのばら CAFE」も開店中です。

ベルばらカフェ

「ベルサイユのばら展」東京会場の開催は11月20日まで。
https://verbaraten.com/

渡辺俊幸 シンフォニック・ガラ・コンサート

渡辺俊幸 シンフォニック・ガラ・コンサート

9月21日に東京芸術劇場大ホールにて開催された「渡辺俊幸 シンフォニック・ガラ・コンサート ~音楽家活動50周年の祝典~」に足を運びました。

すばらしかったです。
堪能しました。

渡辺俊幸さんの映像音楽と編曲作品を中心にしたプログラム。
プロデュースが盟友さだまさしさん。
演奏は東京フィルハーモニー交響楽団。俊幸さん自身の指揮。

大河ドラマ『毛利元就』(1997)、『利家とまつ』(2002)、朝の連続テレビ小説『おひさま』(2011)と、開幕からNHK作品が続く私好みの選曲。
『おひさま』は劇中曲もメドレーで聴かせて、平原綾香さんが歌う主題歌に続く構成。平原さんの生歌で「おひさま~大切なあなたへ」を聴くのは初めてかも。フルオーケストラをバックにした歌唱が圧巻でした。
さらに、平原綾香さんの代表曲「Jupiter」を俊幸さんによる新アレンジで。導入部にホルストの「惑星」のスコアが織り込まれていて、実にドラマティックで壮大な「Jupiter」になっていました。

続いては先ごろ亡くなった渡辺宙明先生(俊幸さんのお父様)の追悼コーナー。「マジンガーZ」「秘密戦隊ゴレンジャー」「宇宙刑事ギャバン」を俊幸さんの編曲で。歌は洗足学園音楽大学の学生たちによるメモリアル合唱団。「マジンガーZ」は映画『マジンガーZ/INFINITY』ヴァージョン。「ゴレンジャー」と「ギャバン」は全くの新編曲で、ジョン・バリー風のスパイ映画っぽいムードがある「ゴレンジャー」、女声合唱が入って壮大な「ギャバン」と、俊幸さんならではのサウンドと宙明メロディの共演に胸が熱くなります。

1部の最後はNHKドラマスペシャル『大地の子』(1995)の音楽。つい先ごろも何度目かの再放送をしていた名作です。温かく雄大なメロディがオーケストラサウンドに映えます。

休憩をはさんで、2部はさだまさしさんの歌から。「主人公」と「風に立つライオン」の2曲。「風に立つライオン」は短編小説か映画みたいなドラマのある歌で、聴くうちにぐっときてしまいました。

次は俊幸さんが手がけたアニメ音楽のコーナー。『新幹線変形ロボ シンカリオン』(2018)と『宇宙兄弟』(2012)の音楽をそれぞれメドレー(組曲)で。大河ドラマとはひと味違う、アクティブで高揚感のある曲想にわくわくします。『宇宙兄弟』といえばエレキギターのサウンドが特徴なのですが、今回はシンフォニック・コンサートということでエレキはなし。宇宙の広大さと宇宙への憧れが強調された印象で、新鮮でした。

ラストはNHKスペシャル『ローマ帝国』(2004)のために書いた曲を俊幸さん自身がコンサート用に構成・編曲した組曲「ローマ帝国」。2014年にスペイン・コルドバで開催された「Internatio­nal Film Music Festival」で初演されたと聞いて以来、一度生で聴きたいと思っていたのですよ。壮大で美しく、ときにダイナミック、ときにエキゾティック。混声合唱も加わって盛り上がります。ドキュメンタリーというより、『ベン・ハー』のような史劇映画音楽のよう。コンサートを締めくくるにふさわしいスケールの大きな曲であり、力の入った演奏でした。

アンコールは、さだまさしさんと平原綾香さんが再び登場し、『北の国から』のテーマ曲を2人のヴォーカルで。この公演でしか聴けないスペシャルヴァージョンでした。
『北の国から』(1981~2002)の音楽は(劇中音楽も)さだまさしさんの作曲ですが、シリーズの途中からは俊幸さんが書いた曲も使われています。「れいのテーマ」や「ダイヤモンド・ダスト」という曲が俊幸さんの作曲ですね。なので、『北の国から』も俊幸さんのフィルモグラフィに数えられる作品なわけです。
私は初回放送当時からの『北の国から』ファンでもあるので(今は閉館してしまった富良野の「『北の国から』資料館」に行ったことがあるくらい)、このアンコールには感動しました。 ちなみに今『北の国から』のサントラ盤を引っ張り出して解説書を読んでいたら、倉本聰さんがさださんの「風に立つライオン」を「群を抜いた名曲」と褒めてくれたというエピソードが書かれていて、「そこで『北の国から』につながるのか」とパズルのピースがはまったような気がしたのでした。

耳も心もリッチな気分になれた、すばらしいコンサートでした。

あらためて、渡辺俊幸さん、50周年おめでとうございます!

「京伴祭」のアーカイブが配信中

「京伴祭」のアーカイブが配信中

9月18日に京都・上賀茂神社で無観客(配信のみ)にて開催された「京伴祭」のアーカイブがYouTubeで期間限定配信中です。

下記からどうぞ(終了していたらすみません)。
https://www.youtube.com/watch?v=vLuITm5Clos

「京伴祭 -KYOTO SOUNDTRACK FESTIVAL-」は作曲家の林ゆうきさんが立ち上げた、サウンドトラック専門の音楽フェス。

今回は「エピソード0」として、無観客・無料にて開催されました。

出演は、

宮崎誠(『ワンパンマン』『SPY×FAMILY』など)
高梨康治(『FAIRY TAIL』『NARUTO -ナルト- 疾風伝』など)
林ゆうき(『僕のヒーローアカデミア』『ハイキュー!!』『ポケットモンスター』など)

の3人。

それぞれの代表作、代表曲をバンドの生演奏で披露するライブなのです。

当日はリアルタイムで観られませんでしたが、アーカイブでじっくり楽しませてもらいました。

これが無料でいいの?と驚く素晴らしい内容。
アニメ音楽やサウンドトラックに興味ある方はぜひご覧ください。

来年、有観客開催されるなら、京都に行きたいなぁ。

アーカイブは期間限定だそう(いつまでかは不明)なので、お早目に。

☆「京伴祭 -KYOTO SOUNDTRACK FESTIVAL-」公式サイト
https://kyobansai.com

水木しげるの妖怪百鬼夜行展

水木しげるの妖怪百鬼夜行展

もうすぐ閉会してしまう「水木しげるの妖怪百鬼夜行展」へ行ってきました。

「水木しげるの妖怪百鬼夜行展」公式サイト
https://mizuki-yokai-ex.roppongihills.com/

会場は六本木ヒルズ森タワー52階の東京シティビュー。
妖怪が出そうな夕方=たそがれどきをねらって入場。

天空の水木しげるロード

入ってすぐのエリアでは、スマホにアプリを入れて「妖怪ARカメラ」を起動すると、実景に重なって現れる妖怪の姿を見ることができます。

隠れているのは、がしゃどくろ、ぬらりひょん、火車、すねこすり、アマビエ、一反もめん。
入口すぐのパネルに反応して現れる一反もめんと、窓際に現れるアマビエがちょっとわかりにくいですが、全6体キャッチしました。
アマビエが東京タワーと一緒に撮れるのがいいですね。

がしゃどくろ

ぬらりひょん

火車

すねこすり

アマビエ

一反もめん

ほかにも、境港の水木しげるロードにいるのと同じ妖怪のブロンズ像が展示されていました。

子亡き爺

べとべとさん

展示の本編は水木しげるの妖怪画。
導入は、水木しげるがいかにして妖怪を描くようになったか、を紹介する展示。 水木しげるの少年時代から戦争体験を経て画業に入る歴史と、水木しげるが集めた妖怪関係の古書が展示されてます。
貴重な古書もあって、なかなか興味深いです。

そのあと、妖怪画をずらりと展示。
漫画原稿などはなく、精細な妖怪画をひたすら並べる「妖怪の森」みたいな趣向です。

水木しげる展は何度か行きましたが、今回は『ゲゲゲの鬼太郎』などの漫画キャラクターはあえて省いて、妖怪と妖怪画にフォーカスした展示になってます。
妖怪画を、水木しげるが参考にしたと思われる古書の妖怪画や地方の仮面の写真などとともに展示したり、妖怪が現れる場所別に展示したりしていて、なかなか楽しめます。
ちゃんと原画を展示しているので、目を近づけると繊細なペンタッチや筆のあと、修正のあとなどが見られるのがたまりません。

会場内には妖怪の大きなオブジェもいくつか展示されてますが、それは撮影不可。
入口のぬりかべのみ撮影可でした。

ぬりかべ

最後に水木先生のまわりに妖怪が現れるARコーナーがあり、出口へ。

水木先生

出ると、いい感じに日が暮れてました。

夏の夕涼みに妖怪画を見てひととき、みたいな展覧会。
妖怪初心者から水木しげるファンまで楽しめる内容です。

9月4日までなので、行こうと思ってる方はお早目に。

東京シティビューからの夜景

浜松市美術館「ハイジ展」

浜松市美術館「ハイジ展」

浜松市美術館で開催中の「ハイジ展」を観てきました。

ハイジ展公式サイト
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/artmuse/tenrankai/images/heide.html

「本気のハイジ展」と謳われたこの展覧会。
そのキャッチフレーズに違わぬ充実の内容でした。

浜松市美術館入口

展示スペースは原作関連とTVアニメ関連に大きく分かれています。
原作関連では、ヨハンナ・スピリの人物や生涯を知る資料、『ハイジ』の原作本や翻訳本、それに使用された挿絵などを展示。
スピリ直筆の手紙や各国の『ハイジ』の本、挿絵等が興味深く、貴重です。
日本版の挿絵では、高橋真琴が描いた美少女ハイジと美少年ペーター、蕗谷虹児が描く妙に艶っぽいハイジなどに眼を引かれました。
ハイジファンのみならず、児童文学や児童文化に関心のある人にも楽しめる内容です。

続いて、TVアニメ『アルプスの少女ハイジ』関連の展示。
「高畑勲展」でもけっこうな分量が展示されていましたが、それを上回る充実ぶり。
パイロットフィルム、企画書に始まり、ロケハンの記録、写真、スケッチなど。渡辺岳夫が現地で子どもたちと交流している写真などあって、びっくりしました。
そして、小田部羊一によるキャラクター設定、宮崎駿による場面設定・レイアウト、井岡雅宏による美術設定、高畑監督や富野由悠季による絵コンテ、アニメ原画、セル、背景画、シナリオ、アフレコ台本などなど。 アニメの制作工程をひと通り紹介するボリュームたっぷりの内容です。
ついているキャプションがいちいち的確で感心しました。と思ったら、世界名作劇場やハイジの本を書いている、ちばかおりさんが監修しているのですね。納得です。

音楽関連にもコーナーが設けられていました。岸田衿子直筆の歌詞(完成版と一部違う)や主題歌・挿入歌のメロ譜、松山祐士によるアレンジスコア、BGMのスコア、渡辺岳夫が書いたBGMリスト(の一部)などなど。こちらも初めて見るものが多く、じっくり見せてもらいました。

図録あります。展示品をすべて掲載しているわけではないですが、資料的にも価値があり、読み物としても楽しめます(残念ながら通販の対応はないそう)。

会期は9月11日までなので、気になる人はお早目に。

記念写真コーナー1

記念写真コーナー2

劇場版Gのレコンギスタ

劇場版Gのレコンギスタ

『劇場版Gのレコンギスタ IV』と『同 V』を観てきました。

実は不覚にも『III』を劇場で見逃したので、以降はソフトか配信でもいいかな、と観るのを迷っていたのです。
が、『IV』の上映終了間近になってサントラ盤が劇場限定販売と知り、「これは観て買うしかない」と(購入には座席指定券か半券が必要)。

幸い、アマプラで『III』を観ることができ、木曜日に『IV』の最終上映回を、金曜日に『V』を鑑賞。

GのレコンギスタIV ポスタービジュアル

GのレコンギスタV ポスタービジュアル

気合を感じる映画でした。劇場で観て正解です。

計算されたレイアウト、テンポの速い編集、細部まで気を配った作画など、集中力が必要な映画で、ちょっと目を離すと置いて行かれそう。しかし、これが新しい世代の観客には気持ちよいテンポと密度なのかもしれません。
富野さん元気だ。
「これを見せたい、伝えたい」という気持ちがびしびし伝わってくる。劇場の空間で観てこそ心に迫って来るものがありました。

目的のサウンドトラックもゲット。
ハセガワダイスケが歌う「カラーリング バイ G-レコ」を含む全10曲約30分を収録。
菅野祐悟さんの音楽はクラシック的な香りがあり、ドラマティックな中にも品がある。トゲトゲした曲がないのがGレコらしい。3分を超える長い曲が多く、聴きごたえあります。
売り切れた劇場もあるそうですので、気になる方はお早目に。

新宿ピカデリーでは、1階ロビーで『Gレコ』を特集したディスプレイを展示中。『Gレコ』Blu-rayジャケットイラストとともに、『Gのレコンギスタ』『伝説巨神イデオン』『戦闘メカザブングル』等の富野作品の企画書を展示。「富野由悠季展」風で、なかなかマニアックでした。

新宿ピカデリーのディスプレイ1

新宿ピカデリーのディスプレイ2

新宿ピカデリーのディスプレイ3

新宿ピカデリーのディスプレイ4

音楽物語「窓ぎわのトットちゃん」

音楽物語「窓ぎわのトットちゃん」

8月15日、東京芸術劇場で開催された「黒柳徹子のハートフルコンサート2022」に行ってきました。

黒柳徹子さんが毎年8月15日に開催しているコンサートで、今回が32回目だそうです。

演奏は東京フィルハーモニー交響楽団。指揮・角田鋼亮

第1部は前橋汀子さんをソリストに迎えてのクラシック。
ベートーベン「ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス第2番」
サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」
前橋さんのヴァイオリンが、一音聴いただけで惹きこまれるようなすばらしい音で、心が震えました。
トークで前橋さんが黒柳徹子さんのお父さん(ヴァイオリニスト)に習ったことがあると話すと、黒柳さんが「その話、初めて聞きました」と驚く一幕が面白かった。

第2部が本日のお目当て。 黒柳徹子さんの語りとオーケストラによる音楽物語「窓ぎわのトットちゃん」です。
黒柳さんの自伝的小説に小森昭宏先生が音楽を付けた作品(構成・黒柳徹子、飯沢匡)。
レコードやCDになっていますが、生で聴くのは初めて。

2016年に小森先生が亡くなって以来、長らく上演してなかったのだそうです。
黒柳さんが小森先生の思い出や小森先生の音楽のすばらしさ、亡くなったあとの悲しい気持ちなどをお話されて、それを聞くだけで泣きそうになりました。
ちなみに黒柳さんのお父さんと小森先生のお父さんは同じオーケストラで演奏した仲。

音楽物語「窓ぎわのトットちゃん」。
あらためて生で聴くと、「録音されたものとは別もの」ってくらい胸に響きました。

まず、音楽がすばらしい。ラジオやテレビ用に書かれる曲とは違って、最初から生演奏するために書かれたスコアなので、オーケストラがふくよかにたっぷり鳴るように書かれている。
それから、メインテーマとなる「トットちゃんのテーマ」のキャッチーさ。その変奏が何度も出てきて、終わるころには頭に刷り込まれてます。トットちゃんと一緒に歌ってしまうくらい。
また、「音楽物語」というのは伊達でない。言葉よりも音楽で描写する演出で、黒柳さんの語り以上に音楽が主役になってます。ほとんど、交響詩とか交響組曲と呼んでもいいくらい。抒情的なテーマから、ユーモア、サスペンス、躍動、クラシックのパロディまで、映像音楽的なテクニックもふんだんに投入されている。描写音楽的な部分や現代音楽的な部分もある。
小森先生自身、戦争で命を失いかけた体験をしているだけに、原作に共感し、音楽的アイデアとテクニックを惜しみなく注ぎ込んだのだでしょう。
そして、全体としては、とても愛情に満ちた、心に染みる作品になっています。

小森サウンドに包まれる幸せな体験でした。
生で聴けてよかった。
ステージを観るまで真価がわからなかったです。
音楽が鳴っているあいだに黒柳さんが細かい芝居をしてるとか、トットちゃんがチンドン屋を呼ぶところでホントにチンドン屋が現れるとか、音だけ聴いてたらわからないもの。
子どもたちも楽しんで聴けるすばらしい作品でした。

ぜひ末永く上演し続けてほしいです。

「黒柳徹子のハートフルコンサート」パンフレット

フィルフィル5周年記念コンサート

フィルフィル5周年記念コンサート

14日に開催された「資料性博覧会15」にたくさんのご来場、応援、ありがとうございました!

撤収のあとは、フィルフィル(フィルム・スコア・フィルハーモニック・オーケストラ)5周年記念特別公演「TRIBUTE TO THE FILM SCORE ~FilPhil 5th Celebration~」(夜の部)に行ってきました。

フィルフィルは映画音楽を専門に演奏するオーケストラ。
「え、まだ5周年?」とちょっと驚いてます。
コロナ禍で開催が延びたので実は6周年だそうですが、もっと長く活動している気がしていました。

会場のオペラシティコンサートホールのロビーには、これまでの公演のメインビジュアルのタペストリーがずらり。並ぶと壮観です(実は全公演は聴いてない)。

タペストリー1

タペストリー2

パンフレットの表紙は黒地に金箔押しと気合が入ってる。

今回は昼夜2回公演。昼と夜とで一部プログロムが違う。
が、資料性博覧会があるので昼公演が聴けるわけもなく、必然的に夜公演へ。
恒例のコスプレしたお客さんもいて、開演前から気分が盛り上がります。

演奏曲を決めるために楽団員へのアンケートとSNSを利用した人気曲投票を行ったそうで、選りすぐりのプログラム。

第1部「もう一度聴きたい!みんなが選ぶあの名作たち」
第2部「ぜひ聴いてほしい!フィルフィルこだわりの名曲」
第3部「何度でも聴きたい!生誕90周年ジョン・ウィリアムズ」

の3部構成(休憩も2回)。
誰もが知ってる名曲から、ちょっと通好みの作品まで、ほかの映画音楽コンサートにないユニークさがあります。

個人的には、『スター・トレック』『ヒックとドラゴン』『ジュラシック・パーク』『シンドラーのリスト』と好きな曲が入っていて大満足。
また、オペラシティのパイプオルガンを使った「インターステラー」組曲はしびれました。2階のバルコニー席で聴いていたので、目の前からパイプオルガンの音の塊が飛んでくるような印象。さらにオーケストラの音が下から響いてきて、宇宙に浮かんでいるようなトリップ感が体験できました。

パイプオルガン

1曲目の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』から終盤の『スターウォーズ』4曲、アンコールの映画音楽メドレーまで堪能しました。

フィルフィルはアマチュアオーケストラですが、団員が映画音楽ファンであるというのが強み。多少テクニック的に荒々しくても熱気と愛情がある。それに若い。今回、団員投票で選ばれた人気曲第1位が『ヒックとドラゴン』だったと知って深く感動しました。

映画音楽のコンサートというと50~60年代の定番の名作が演奏されることが多いけれど、フィルフィルでは一番古くても『スター・ウォーズ』(1977)という潔さ。現代の映画音楽に果敢に挑戦し、聴いてもらおうという気概を感じます。

代表で音楽監督も務める戸田信子さんは、Netflixのアニメ『ULTRAMAN』『攻殻機動隊SAC_2045』、今放送中のTVアニメ『RWBY 氷雪帝国』などの音楽を手がける作曲家でもある。
最新の映像音楽作りの現場を知る戸田さんがディレクションしていることもフィルフィルの大きな強みでしょう。

海外からオリジナルスコアを取り寄せて、サウンドトラックに限りなく本物に近い音をファンに届けようとする戸田さんの熱意と団員の努力が映画音楽ファンに支持され、公演を重ねて5周年(6周年)につながったと思います。

あらためて、おめでとうございます!

フィルフィル

プロフィール

腹巻猫 はらまきねこ

PROFILE画像

サウンドトラック構成作家、文筆家。
サウンドトラック・アルバムの構成(選曲・曲順・曲名決め)を専門で手がけるほか、映像音楽に特化した音楽ライターとして、作曲家インタビューやCD/Blu-ray/DVD解説書・雑誌記事・書籍の執筆等で活動。

お仕事の依頼等は⇒ contact@soundtrackpub.com