腹巻猫のブログです。
主にサウンドトラックやコンサート、映像作品などについて書いています。
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資料性博覧会15
8月14日(日)に中野サンプラザで開催される資料性博覧会15に「劇伴倶楽部」で参加します。
(コミケは不参加)
2022年8月14日(日) 9:30~13:15
中野サンプラザ 13F コスモホール
※入場には、1人1冊パンフレット(税込500円)が必須となります。
開催時間短めですのでご注意ください。
新刊はなく、「劇伴倶楽部」の既刊と《SOUNDTRACK PUB》レーベルのCDを頒布します。
「劇伴倶楽部」は下記2タイトル。
「THE MUSIC OF YAMATO 1977 ~宇宙戦艦ヤマト(1977)の音楽世界~」
「THE MUSIC OF "Anne of Green Gables" ~赤毛のアンの音楽世界~」
《SOUNDTRACK PUB》CDは、最近のリリースと在庫少なめのものを中心に10タイトルほど持ち込みます。
会場特価(税込定価の2~3割引き程度)で頒布予定です。
なお、CD1枚以上ご購入の方に渡辺宙明先生直筆サイン入りジャケットサイズカード1枚をプレゼントします(なくなり次第終了)。
これは「渡辺宙明コレクション ガードドッグ/おーい!太陽っ子」のリリースの際に作った販促グッズで、当時、目の前で1枚1枚サインしていただいたものです。
(カードは1会計につき1枚です)
いずれも持ち込み数は少なめですので早くなくなったらごめんなさい。
今回にあわせて、在庫切れになっていた「劇場版 エースをねらえ! 総音楽集」を追加プレスしました。
これは資料性博覧会が終わったら通販も再開します。
資料性博覧会の詳細は下記参照。
https://www.mandarake.co.jp/information/event/siryosei_expo/
TAROMAN
7月18日からNHK Eテレで深夜に放送されている帯番組『TAROMAN』がなかなかイカれてます(ほめてます)。
岡本太郎の絵画や彫刻をモデルにした怪獣(番組内では奇獣と呼ばれている)が登場する「特撮活劇」(公式サイトでの呼称)です。岡本太郎の展覧会のPRも兼ねた番組のようです。
TAROMANというのは70年大阪万博のシンボル「太陽の塔」が人間型になったみたいな巨大ヒーロー。
もともと岡本太郎の作品は60~70年代当時から怪獣っぽいと言われてました。実際、岡本太郎は映画『宇宙人東京に現わる』で宇宙人をデザインしているし。シュールレアリスムや古代美術の流れを汲む点でも、ウルトラ怪獣に通じるところがあります。
だから、岡本太郎の作品が怪獣になるのは古くからの怪獣ファンにとってはすごく納得できることでした。今までやりたくても誰も大っぴらにはやらなかっただけでしょう。
『TAROMAN』の面白いところは、昭和の特撮ヒーロー番組という設定で作られているところ。画角も昔のテレビのサイズに合わせたスタンダードだし、映像もざらざらしたフィルムっぽい感じに仕上げられている。
やってることは相当むちゃくちゃです。TAROMANはまともに怪獣と戦うわけではない。番組自体が「なんだこれは!」という岡本太郎の言葉をテーマに作られているので、ヒーロー番組とはかけはなれたシュールな展開ばかり。
でも、それが爽快です。岡本太郎イムズともいうべき、常識破壊の爆発力がある。いろいろなことに気を使って無難な展開に終始してしまう物語や映像作品に対するカウンターになっています。
あと、最近の特撮番組はヒーローばかりが注目される傾向がありますが、以前紹介した『KJファイル』といい本作といい、怪獣に焦点を当ててるのが「怪獣ファン」としてはうれしいです。
全10話なので今週で終わってしまいますが、「まとめて再放送」が予定されているので、見逃した方はぜひ観てほしいです。
「まとめて再放送」は、
7月30日(土)深夜25時(第1話~第5話)、31日(日)深夜24時45分~
ヒックとドラゴン in コンサート
7月23日、NHKホールで開催された「ヒックとドラゴン in コンサート」に足を運びました。
アニメ映画『ヒックとドラゴン』の全編を上映しながら、音楽をオーケストラの生演奏で楽しむシネマ・コンサートです。
『ヒックとドラゴン』は2010年に公開されたドリームワークス制作のアニメ映画。イギリスの児童文学を原作に、ドラゴンとバイキングの少年との友情を描いた物語です。
音楽はジョン・パウエル。
演奏は、指揮・佐々木新平、神奈川フィルハーモニー管弦楽団。
よかったです。堪能しました。
ジョン・パウエルはイギリス出身で、映画『ボーン・アイデンティティー』シリーズやアニメ映画『カンフー・パンダ』などの音楽を手がける作曲家。異色のヒーロー映画『ハンコック』の音楽が記憶に残っています。
『ヒックとドラゴン』の音楽は、北欧を舞台にしたファンタジーらしく、エキゾティックな響きを含むスケール感豊かな作品。フルオーケストラがダイナミックに鳴り響くシーンが多く、聴きごたえ抜群です。弦の速いパッセージや勇壮な金管の音色、ティンパニの力強い音などぞくぞくします。
電子音を使わない生音の響きが気持ちいい。シネマ・コンサート向けの作品だなぁと思いました。
とりわけ生のよさが味わえたのは、ヒックとアスティがトゥースに乗って飛ぶシーンのヴァイオリンソロ。
美しい映像とあいまって感動的。ぐっと気持ちが入ります。
エンドクレジットの主題歌は割愛。 生演奏の音楽に差し替えて、尺も短くなってました。
歌が入るとマイクとPAのセッティングが必要になり、歌手も呼ばなければならず、手間と予算が増えてしまいます。それに、物語が終わった後、長々とエンドクレジットが流れると子どもは退屈してしまうかも。と思うと、これは仕方ないかな。
シネマ・コンサートならではの幕間の演奏もあったし、アンコールも聴けて満足です。
なんといっても映画自体がすばらしいんですよね。
子どもが楽しめる作品なので、アクションはあるけど残酷なシーンはないし、誰も不幸にならない。深刻なところもない。
でも、ヒックの成長や親子の愛情、若い世代が古い因習を破って果敢に挑戦し、新しい未来を築く姿がしっかり描かれている。爽快で後味がいい作品です。
安心して絵と音楽を楽しめるという意味でも、シネマ・コンサートにふさわしい。
親子連れの観客も目につきました。夏休みに家族で鑑賞するにはぴったりのシネマ・コンサートでしょう。
トゥース(ドラゴン)のフィギュアやぬいぐるみを連れた、熱心なファンと思われる方たちも来ていました。
『スター・ウォーズ』や007映画のシネマ・コンサートに来る客層とはひと味違っていた印象です。
これはぜひ、『ヒックとドラゴン2』『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』と続けてシネマ・コンサートでやってほしいです。
KJファイル
7月10日深夜から始まった1回5分のミニ番組『KJファイル』が予想以上に面白かった。
☆公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/anime/kjfile/
「KJファイル」とは「怪獣ファイル」。
毎回オリジナル怪獣を紹介するアニメ番組です。
ほほう、ゲキメーションか。
『銭天堂』でもやってるし、いまやそんなに珍しくないぞ。
でも、レトロな昭和挿絵風の怪獣描写がなかなかいい。
とか思ってたら、怪獣のテーマソングが流れてきて、呆然。
「怪獣のうた」ではなく、登場している怪獣専用のオリジナルソングなのだ。
1回5分で怪獣が2体紹介される。
もう1体のほうもオリジナルのテーマソングが流れる。
毎回、登場する怪獣の歌を作って流すらしい。
ふつうにBGMを作るより手間がかかってるのではないか。
怪獣をテーマにしたアニメ番組ということは知っていたのだけど、『ゴジラSP』みたいな、もうちょっとシリアス寄りかと思っていたので、あっけにとられてしまった。
しかし、このテイスト、60年代のソノシートみたいで懐かしい。
昭和挿絵風ビジュアルも怪獣の歌も、1怪獣2分という長さも、ソノシートっぽい。
サントラ(ソングコレクション)が出るならソノシート風に作ってほしいな。
訃報・高橋和希さん
7月6日、『遊☆戯☆王』の作者として知られる漫画家の高橋和希さんが亡くなったことが発表されました。60歳でした。
とても残念です。
心より哀悼の意を表します。
『遊☆戯☆王』の派生作品であるTVアニメ『遊☆戯☆王ZEXAL』のサウンドトラックの構成を4年間担当させていただきました。
不勉強にして、それまで『遊☆戯☆王』がどんな作品かよく知りませんでした。
カードゲームのイメージを覆す壮大な世界観に驚き、大いに刺激された思い出があります。
ご冥福をお祈りいたします。
☆「遊戯王」高橋和希さんが死去(ニフティニュース)
訃報・渡辺宙明先生
渡辺宙明先生が6月23日に亡くなりました。96歳でした。
ただただ、感謝しかありません。
ありがとうございました。
いよいよ発売!
《SOUNDTRACK PUB》レーベル第30弾「シートン動物記 くまの子ジャッキー/りすのバナー 音楽集」がいよいよ6月22日に発売になります。
小森昭宏先生の音楽をたっぷり詰め込んだアルバムです。
「世界名作劇場」に比べるとあまり知られてない印象ですが、『くまの子ジャッキー』は放送当時観ていて大好きでした。
主題歌と森やすじさんのキャラクター、伊藤主計さんの美術、音楽も絵もしみじみとよかったです。
フランスでは「Bouba」というタイトルで放送されたらしいんですね。
1981年の初放送時は、音楽はフランスの音楽家のものに差し替えられたが、2003年に放送されたヴァージョンはダビングがやり直され、オリジナルの日本の音楽が使用された… とフランスのアニメ音楽ファンサイト「ANSONG」に書かれていました。
そのANISONGでCDを紹介していただきました。ありがとうございます!
https://anisong.fr/news/les-musiques-originales-de-bouba-reeditees-en-cd/
海外の『くまの子ジャッキー』ファンのみなさんにも聴いていただきたいです。
ぜひぜひ、お求めください!
ドラゴンボール超 スーパーヒーロー
映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』を観ました。
実は私、『ドラゴンボール』の映画をほとんど観たことがない。
『ドラゴンボール』自体、そんなに観ていない。
なので、近年の劇場版も観ていませんでした。
なぜ観に行ったかというと、音楽が佐藤直紀さんだったから。
佐藤直紀さんが『ドラゴンボール』の音楽を手がけるのはこれが初めて。
音楽が楽しみすぎて、観る前にサントラ盤を買ってしまったくらい(観るまで聴くのはがまんした)。
実際、観て…
すごかった。
開巻から目が離せず、思わず拳を握ってしまったり、感動したり…
すみません、ドラゴンボール映画なめてました。
ほぼ全編がセルルック(手描き風)3DCG。
しかし、手描きと見まがうほど自然で、動きのタイミングやスピードも気持ちいい。
東映アニメーションが進化させてきた手法の完成形と言えるのではないでしょうか。
その3DCGを生かして描かれるバトルシーンが迫力満点。CGならではの回り込みなどを巧みに使ったアクション描写に引き込まれます。
アクションシーン以外でも3DCGの特性を生かしたカットがたくさんあり、さすが、プリキュアシリーズのEDアニメーションを作ってきた児玉徹郎監督だなぁと。
楽しみにしていた音楽はといえば…
すばらしかったです!
みごとに映画音楽になっている。
アクションシーンでも効果音やセリフに埋もれず、音楽が耳に残る。
といって、主張しすぎているわけではなく、しっかり演出の一部になっている。
それでいて、ヒーローのテーマやレッドリボン軍のテーマなど、印象に残るメロディがある。劇中くり返し登場して、後半になると「あっ、また来た!」と思う。映画が終わったあとも口ずさめるほど。これは映画音楽としてとっても大事なことと思うのです。
最近の佐藤さんはテレビの仕事は少なめでもっぱら映画で活躍しています。
シリアスな実写映画の手法がこの作品にも生かされていると思います。
同時に、これだけストレートな娯楽作品も佐藤さんの最近の仕事にはなかった。
子ども向けアニメ映画は『プリキュア』以来ではないでしょうか。
場面を盛り上げ、観客を映画に没入させる。娯楽映画音楽の王道がしっかりふまえられた作品です。
この映画でいちばん驚いたのは…
エンドクレジットに歌が流れなかったこと。
実はオープニングにも劇中にも、歌はいっさい流れない。
昨今のアニメ映画としては(日本映画としても)異例の、主題歌・挿入歌のない映画なのです。
その代わり、エンドクレジットには、劇中音楽のメドレーが流れる。
劇場で思わず、じーん。
感動しました。
よほど音楽に信頼がなければ、こういう演出にはしない。
佐藤直紀さんの仕事は、みごとにそれに応えてます。
この映画、「アベンジャーズ」に代表されるマーベル映画をけっこう意識してると思うのですね。
でも、「意識してる」くらいであって、真似してるとは思わない。
海外セールスを強く意識した作品ということでしょう。
エンドクレジットに劇中音楽のメドレーが流れて終わるのもマーベル映画っぽい。
そして、佐藤直紀さんの音楽は、アラン・シルヴェストリやマイケル・ジアッキーノの音楽にぜんぜん負けてない。
むしろ、この作品をきっかけに海外作品でも活躍してほしい。
それだけパワーのある映画であり音楽でした。
アニメファンのみならず、サントラファンもぜひ見るべし。
劇場のディスプレイです。
サントラ発売中!
犬王
湯浅政明監督の最新作、映画『犬王』を観ました。
「観た」というより、「体験した」というほうがぴったり。
圧倒的な映像と音楽を浴びてくらくらしました。
南北朝から室町期の京都を舞台に、人々を熱狂させた能楽師「犬王」を斬新な解釈と映像で描くアニメーション映画。
異形の姿で生まれながらも歌と踊りに並外れた才能を発揮する犬王と平家の呪いで盲目になった琵琶法師・友魚(ともな)が出会い、新しい音楽と舞を披露するポップスターとして人気を集めていく。ふたりの友情と葛藤がドラマとなります。
監督もインタビューで語ってるのでネタバレでないと思いますが、『どろろ』+ロックミュージカル、みたいな作品。
圧巻は友魚が琵琶をかき鳴らし歌うライブシーンです。
室町の京の都にロックサウンドが鳴り響く。
もちろん、琵琶からエレキギターの音がするわけがない。都の人々にはそのくらい新しい音楽に聴こえているという演出なのでしょう。
音楽は『あまちゃん』『いだてん』の大友良英さん。
もともと大友さんはアヴァンギャルドな音楽を作っていた人なので、前半の現代音楽的な音楽が「本領発揮!」という感じで面白い。
見せ場のライブシーンは臨場感にあふれ、エネルギッシュです。
ただ、ここまであからさまにロックにしなくてもよかったのでは…?
ロックへのオマージュが強すぎて、つい、ほかの映画が頭に浮かんでしまう。
もっと、邦楽とロックが融合したような、わけのわからない音楽であったほうが物語に合っていたのではないかな…。
大友さんだったら、そういう音楽が作れたと思うのです。
バレエを思わせる終盤の犬王の舞のシーンも同じくで、序盤の異形の体を持て余したような踊りが迫力があった。
カオスのほうがエネルギーがあったと思うのですね。
とはいえ、聴いたこともない新しい音楽を作るのも難しいし、共感も得づらい。
表現のスタイルとしてロックやバレエを選んだのは、考えた末の落としどころかなと思いました。
ないものねだりを書きましたが、アニメファン必見の作品であるのはたしか。
ちょっとグロいシーンもありますが、心ゆさぶられる体験をしたいという方、お奨めします。
機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島
映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』を観ました。
『機動戦士ガンダム』TVシリーズ第1作の1エピソードをふくらませた新作アニメ映画。監督は第1作のキャラクターデザイン・作画監督を務めた安彦良和。第1作の雰囲気と現代的な解釈・描写が絶妙にブレンドされています。
これはガンダムファン以上に安彦良和ファンが観て楽しい作品ではないでしょうか。
なんたって、キャラクターの表情や芝居が安彦さん描く漫画のコマそのまんま。観ていてニヤニヤしてしまいました。
ガンダム映画としては、また会えると思ってなかったあんなキャラやこんなキャラの登場にときめきました。
第1作の音楽を何曲かアレンジして使ってるのもいい。そのアレンジの仕方がひとひねりあっていい。
せっかくだから、第1作のために録音されたものの一度も使われなかった子どもたちのテーマ(ハイジのBGMみたいな曲)も使ってほしかったなー。