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腹巻猫のブログです。
主にサウンドトラックやコンサート、映像作品などについて書いています。

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伊福部昭総進撃

伊福部昭総進撃

5月26日、東京オペラシティ コンサートホールで開催されたコンサート「伊福部昭総進撃 ~キング伊福部まつりの夕べ~」に足を運びました。

大変な熱演でした。

3部3時間に及ぶプログラム。
1部ではピアノとオルガンの独奏、2部はオーケストラで「SF交響ファンタジー」1番~3番一挙演奏。これだけでもお腹いっぱいなのに3部は純音楽の管弦楽作品を2曲。アンコールもあって、聴く側も全力出しきった感じ。

私の席は2階左のバルコニー席1列目。ステージと客席の境あたり(選んで買った)。
ここは音のバランスはいまいちなれど、楽器の配置やピアニストの手元が見えるし、指揮者の横顔も見えれば、ヴァイオリンの譜面まで読めてしまう。横を見ればパイプオルガン奏者の手元も見えるという、自分的には特等席。
2部では演奏者よりも和田薫さんの鬼気迫る指揮ぶりにくぎ付けになっていました。原曲となった映像音楽のパワーをよみがえらせる渾身の指揮でした。

1部の若い女性奏者ふたりもよかった。ロシアで学び卒論に伊福部音楽を取り上げたという松田華音さんの瑞々しい演奏。パイプオルガンの石丸由佳さんの全身を使った力演。石丸さんは和田薫さんの編曲にない音を加える意欲的な演奏で、苦心しつつも楽しんでいるのが伝わってくる。パイプオルガンはホールごとのオーダーメイドなのでホールが違えば音が違うし、使える音や機構も異なる。なので会場ごとに演奏を変えるのは合理的なんですよ。

3部の本名徹次さん指揮の純音楽はさすがの安定感で、純音楽ならではの緻密な音の構成がよくわかる。楽曲の魅力とともにオーケストラの持ち味も引き出す好演でした。

会場で元キングレコードの藤田純二さんにお会いして、しばし立ち話。近年自身が関わったレコードの作品が生演奏される機会が増えて、感慨深いとおっしゃってました。当時はこんな時代が来るとは思わなかったとも。1980年前後は映像音楽ファンの想いとレコード会社の思惑が合致して、夢のような企画が次々と実現した稀有な時代でした。その時代の熱気が伝わってくるようなコンサートだったと思います。

伊福部昭総進撃プログラム

<第1部>
松田華音:子供のためのリズム遊び(抜粋)、ピアノ組曲
石丸由佳:SF交響ファンタジー第1番(和田薫編曲パイプオルガン版)

<第2部>
和田薫 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
SF交響ファンタジー第1番、第2番、第3番(全曲)

<第3部>
本名徹次 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
交響譚詩 シンフォニア・タプカーラ

<アンコール>
本名徹次 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
ロンド・イン・ブーレスク

Hans Zimmer Live in Japan

Hans Zimmer Live in  Japan

5月20日、横浜ぴあアリーナで開催された「Hans Zimmer Live in Japan」に足を運びました。

ハンス・ジマーの初来日コンサート。
堪能しました。
音圧がすごい。まるっきりロック・コンサートでした。

横浜ぴあアリーナは満員。
若い観客が多い。女性率も高い。

セットリストは、『DUNE/デューン 砂の惑星』『ワンダーウーマン』『マン・オブ・スティール』『グラディエーター』『パイレーツ・オブ・カリビアン』『デューン 砂の惑星 PART2』『ダークナイト』『ラスト サムライ』『ダンケルク』『インターステラー』『ライオン・キング』など。

このセットでワールドツアーしてるので当然だけど、エンターテインメントとしての完成度がすばらしかった。

ハンス・ジマーはインタビューで「このコンサートは映画本編から音楽が解き放たれるイベントでもある」と語ってます。
まさにその通りで、映画本編の映像や画像を映したりはしないし、サウンドトラックをそのまま再現する演奏でもない。
観客にめいっぱいライブで楽しんでもらうためのアレンジ・演奏・演出でした。

リズムが厚く、ドラムセット2セットにティンパニ2セット、グランカッサも2台。
金管楽器はホルン4人とトロンボーン3人とチューバ?
ギター、ベース、ストリングス、キーボード、アコーディオン、ヴォーカル、それに民族楽器(笛・打楽器)などの編成。
ソリストの技量が圧倒的で聴き入ってしまいます。

大編成ではないけれど、サウンドと照明のデザインを周到に行い、映像から解放されたサウンドトラックのパワーと魅力を体験させる。そんな感じ。

アンコールは『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』組曲と『インセプション』から「Time」。

ハンス・ジマーは自らMCを務め、ギターやキーボードも弾いて活躍。終始ニコニコしてたのが印象的でした。
行ってよかった!
満足!

ハンス・ジマー・ライブ 01

ハンス・ジマー・ライブ 02

ハンス・ジマー・ライブ 03

ハンス・ジマー・ライブ 04

訃報・川村栄二先生

『仮面ライダーBLACK』『忍者戦士飛影』『忍者戦隊カクレンジャー』などの音楽を担当された作編曲家の川村栄二先生が5月11日に亡くなりました。
大変残念です。

川村栄二先生には『宇宙船』のインタビューでお世話になりました。

お酒の好きな方で、ご自宅にうかがったら昼間っからお酒を出されて、飲みながら取材することに…

楽しすぎて途中からグダグダになってしまった思い出があります。
(今はそんなことできません)

川村先生、あのときは申し訳ありませんでした。
すばらしい音楽をありがとうございます。

どうぞ安らかに。

川村栄二さんご逝去(JCAA)

赤毛のアン アニメコンサート 2025

赤毛のアン アニメコンサート 2025

4月29日、東京オペラシティ コンサートホールで開催された「赤毛のアン アニメコンサート」に足を運びました。

2024年に開催された同名コンサートの再演。
プログラムは前回と同様ながら、オーケストラが前回の2倍の規模になって、聴きごたえ満点でした。

前回はオーケストラが20人程度。弦は22221という編成。
今回は40人規模に拡大し、弦は86442の編成。低音がしっかり響いて、音の厚みと和声感が増しました。
さらに前回はいなかったサックスが4人参加。アルト2本にテナーとバリトンが1本ずつ。「赤毛のアン」の音楽においてサックスは隠し味のスパイスみたいなもの。サックスの音色が入ることで、バロック風なのに現代的という不思議な味わいが出ます。これがとてもよかった。
また、前回はピアノがキーボードで代用されていましたが、今回はグランドピアノ。たっぷりの弦とあいまって、エンディング主題歌「さめない夢」の音がみごとに再現されていたのが聴きどころでした。

前回大混雑した物販も工夫され、しっかり動線が確保されてました。商品も十分用意されたらしく、前回のように開場15分でグッズが売り切れるということもなし。よかったよかった。
いちばんよかったのは、パンフレットが作られたことですね。前回パンフレットがないのが大変不評だったので、アンケートの結果が反映されたのでしょう。
パンフレットは箔押しタイトルの豪華な装丁。演奏の流れに沿った場面写(本編カット)をたっぷり掲載。演奏曲リストとオーケストラメンバーもしっかり記載されていて、資料になります。
さらにアニメスタッフの新規インタビューまで掲載されていたのに驚きました。企画の佐藤昭司さん、仕上げ(色指定・検査)の小山明子さん、制作デスクの増子相二郎さん、音響効果の松田昭彦さん、という顔ぶれ。メインスタッフのほとんどが物故されているので貴重です。

アンケートに「世界名作劇場でコンサートを開催してほしい作品は?」という項目があったので、シリーズ化されるかもですね。
私は「母をたずねて三千里」を一番に推したいです。

開演前のステージ

パンフレット

大林宣彦レトロスペクティヴ

大林宣彦レトロスペクティヴ

4月8日、菊川の映画館Strangersで上映中の「大林宣彦レトロスペクティヴ」特集を観てきました。

大林監督の自主製作16ミリフィルム映画三部作
『Complexe=微熱の玻璃あるいは悲しい饒舌ワルツに乗って葬列の散歩道』
『ÉMOTION=伝説の午後・いつか見たドラキュラ』
『CONFESSION=遥かなるあこがれギロチン恋の旅』
の3本をスクリーンで上映する企画。

映像ソフトでも持ってるんですがスクリーンでまとめて観るのは初めて(少なくとも『CONFESSION』をスクリーンで観るのはたぶん初めて)。
やっぱり映画だなぁ、こうやって観るものだなぁと実感しました。

この日に足を運んだのは、上映後に大林作品を多く手がけた作曲家・宮崎尚志さんの息子さん・宮崎道さんと志田一穂さんのトークイベントがあったから。宮崎道さんも作曲家です。
トークの中でも語られていましたが、大林映画といちばん相性がよかったのが宮崎尚志さんの音楽だったと思うんです。伝統をふまえつつ、自由で前衛的。そして独特のリリシズムがある。
トークでは宮崎尚志さんと大林監督の関係、宮崎道さんが間近に見た大林映画の音楽作り秘話などが語られ、さらに秘蔵8ミリ映像も観られて、実によかった。来た甲斐がありました。もっと聞きたかった!

Strangersの「大林宣彦レトロスペクティヴ」は10日まで。9日と10日も上映後にトークイベントがあるので、気になる方はぜひ! 

Strangersの特集ページ
https://stranger.jp/movie/6141/

トークイベントスケジュール

宇宙戦艦ヤマト全記録展

宇宙戦艦ヤマト全記録展

西武渋谷店で開催中の「宇宙戦艦ヤマト全記録展」に2回行ってきました。

1974年に放送されたTVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』の資料(企画書、設定、シナリオ、絵コンテ、原画、セル画、背景画などなど)を集大成した展覧会です。

膨大な資料の量にまず圧倒されますが、それを第1話から第26話まで、各話別に展示するという展示方法も驚きです。それだけの量の資料があるということなんです。

個人的に見どころだったのは、松本零士先生のサインが入った設定が大量に展示されていたこと。一時期は松本零士先生と『ヤマト』のかかわりを公にすることもはばかられる雰囲気がありましたので、感無量です。そして設定画を見ると、松本零士先生のSFマインドあふれる設定やデザインがいかに重要な役割を果たしたかがわかります。キャラやメカだけでなく、惑星や基地などの設定がいいんですよ。デザインだけでなく、ちゃんと「設定」として考えられている。「原作者」ではなかったかもしれませんが、『ヤマト』の世界観の大きな部分を創り上げたのが松本零士先生なんですね。

縮小されて展示されていますが、絵コンテも注目です。安彦良和さんが描くキャラの達者なこと! 特にユキの可愛さがたまりません。また、松本零士先生によるコンテはSF的な絵作りでガーンと迫ってくる。名場面の数々が松本コンテから生まれました。ときどき戦場まんが風になるところも最高です。

柏原満さんの効果音の展示もよかった。柏原さんのテープはATACに保管されているそうです。会場ではテープの箱が観られるとともに、ボタンを押すと「波動砲」「波動エンジン」「ショックカノン」などの有名な効果音が再生される「音の展示」もありました。

渋谷会場の会期は3月31日までと残り少ないですが、『宇宙戦艦ヤマト』やTVアニメ史に興味のある方は必見です。

2回目の訪問時に、出口の寄せ書きに「腹巻猫」でサインしてきました(もちろん会場スタッフ了解の上)。これから行く方は探してみてください。

続きを読む:宇宙戦艦ヤマト全記録展

サウンドトラック☆スクエア終了しました

サウンドトラック☆スクエア終了しました

3月22日に神保町・ブックカフェ二十世紀で開催されたイベント「サウンドトラック☆スクエア」、無事終了しました!

たくさんのご来場・応援ありがとうございました!

ARK SOUNDTRACK SQUAREさんのイベントは5年ぶり(2020年1月以来?)。
この日を待ち望んでいたサントラファンが集まり、予想を上回る盛況でした。
物販も売れたようで、よかったよかった。
終演後の懇親会も盛り上がりました。

次回は未定ですが、チャンスがあればまた開催したいと思います。

IKE and Friends Jazz Night

IKE and Friends Jazz Night

もう1週間経ってしまいましたが…

2月21日、Billboard Live YOKOHAMAで開催された池頼広さんのジャズライブに行って来ました!

2部公演の1部に参戦。

良かった~!
ジャズライブと言っても池さんが手がけたアニメ『TIGER & BUNNY』やドラマ『相棒』、ゲーム『Shadowverse』の曲をジャズの編成で演奏する趣向。
編成はピアノ、ドラムス、ウッドベース、サックス、エレキギターに、池さんも何曲かエレキベースで参加。もともとジャズミュージシャンですからさまになってます。
映像作品やサウンドトラックでおなじみの曲がジャズアレンジで生まれ変わり、生演奏で聴けるという、ぜいたくなライブでした。
渋い…

会場は『TIGER & BUNNY』ファンと思われる女性たちでほぼ満席。
熱気がすごいです。
セットリストも『TIGER & BUNNY』が中心。
すごくよかったけど、もう少し、ほかの作品の曲も聴きたかったなぁ。

しかも、時間が押して最後は少し駆け足になってしまったのが残念。2部の開場時間ギリギリになってしまったのです。
アンコールは省略(笑)

ちょっと不完全燃焼です。
だけど、面白かったからいいか。

これまで『TIGER & BUNNY』『相棒』『神撃のバハムート』など、作品名をフィーチャーした池さんのライブやコンサートはありましたが、池さんの名を冠したライブで映像音楽ばかり演奏するというのはなかったと思います。
昨今、映像音楽のコンサートやライブといえば、原曲をオリジナルスコアや極力イメージを変えずに再現、というものが多いですが、これは思い切ったアレンジによるライブ。曲によっては印象が大きく変わる。
でも、それがいい。
ヘンリー・マンシーニやミシェル・ルグランのように、本人がアレンジし、演奏にも参加する、ジャズ出身の作曲家ならではのスタイル。大野雄二さんが『ルパン三世』でやっていたようなライブですよね。こういうスタイルが、もっと増えてくれると映像音楽の楽しみ方も広がると思います。

ステージ

チケット

続きを読む:IKE and Friends Jazz Night

2025年あけましておめでとうございます

2025年あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。

昨年中はさまざまなサントラのお仕事やイベントでお世話になりました。

本年もよろしくお願いいたします。

訃報・冬木透先生

訃報・冬木透先生

作曲家の冬木透先生が12月26日に亡くなりました。
89歳でした。

『ウルトラセブン』『帰ってきたウルトラマン』『太陽の牙ダグラム』等の映像音楽で知られる一方、本名の蒔田尚昊名義で多くの純音楽や歌曲を発表されました。

個人的には、雑誌『宇宙船』でのインタビューや『ウルトラマンネオス』『妖術武芸帳』『機甲界ガリアン』等のサウンドトラックの仕事、編曲・構成を担当された「組曲 アルプスの少女ハイジ」の復刻やCD-BOX「ウルトラ・マエストロ 冬木透 音楽選集」の仕事などでお世話になりました。コンサートでたびたびご挨拶したことも思い出されます。

特に、今年(2024年)5月に発売された「冬木透 アニメ音楽の世界 牧場の少女カトリ」は、私が企画から参加し、構成とインタビューを担当した思い出深い仕事になりました。
5月の頭には入院されたとお聞きし、結局、このアルバムのために3月に取材したのが、最後にお会いする機会になりました。

たくさんの名曲をありがとうございました。

どうぞ安らかに。

作曲家・冬木透さん死去(NHK News Web)

プロフィール

腹巻猫 はらまきねこ

PROFILE画像

サウンドトラック構成作家、文筆家。
サウンドトラック・アルバムの構成(選曲・曲順・曲名決め)を専門で手がけるほか、映像音楽に特化した音楽ライターとして、作曲家インタビューやCD/Blu-ray/DVD解説書・雑誌記事・書籍の執筆等で活動。

お仕事の依頼等は⇒ contact@soundtrackpub.com